6歳から9歳で苦手な友達がいても大丈夫。親の声かけと関わり方を学術的な根拠とあわせて解説

苦手な友達がいても、子どもの育ちが止まるわけではありません。

学校から帰ったあとに、「あの子と一緒だと疲れる」「今日はあの子にいやなことを言われた」と話すことがあります。6歳から9歳は、友達の人数よりも、関わり方の違いがはっきり見えてくる時期です。気が合う子もいれば、話し方や遊び方が合わない子も出てきます。

ここで親が急いで目指したくなるのは、誰とでも仲良くできる子です。ただ、学校生活で本当に長く役立つのは、別の力です。苦手な相手がいても、気持ちを言葉にできることです。無理なときは距離を取れることです。困ったら先生や大人に助けを求められることです。

この力をここでは、戻れる力と呼びます。気持ちが乱れても、自分を守りながら関係の中に戻れる力です。受験を考えるご家庭でも、まだ考えていないご家庭でも、この戻れる力は学力とは別の土台として静かに効いていきます。

親の助言は、仲良くしなさいより、こう動こうのほうが届きます。

苦手な友達がいると聞くと、「でも仲良くしようね」とまとめたくなります。けれど、この言い方だけでは、子どもは自分のしんどさを飲み込みやすくなります。すると学校では、急に怒るか、黙って耐えるかの2つに傾きやすくなります。

家で最初に渡したいのは、良い子になる言葉ではありません。使える言葉です。「それはいやだったね」「どこがいちばん困った」「そのとき、どうしたかった」という流れで受け止めてから、「次はこう言ってみようか」と短く形にします。

米国小児科学会の保護者向け情報でも、学童期の子どもについて、友達関係の話をよく聞き、困りごとが起きたときは自分で解決する力を学べるよう支えることが勧められています。親が全部を代わりに解決するのではなく、1つ先の言葉を渡す関わり方です。

6歳から7歳には、短い言葉が役立ちます。

低学年の前半は、気持ちは大きいのに言葉が追いつかないことがあります。ですから、「気にしないで」より、「その言い方はいやって言っていいよ」のほうが使いやすいです。「やめて」「いまは無理」「先生に言うね」といった短い言葉は、実際の場面で出しやすいからです。

家では、言えなかった日を責めないほうがうまくいきます。「言えなかったんだね。じゃあ次は1つだけ言ってみようか」と、次の1歩だけ置くほうが、学校での再現がしやすくなります。

8歳から9歳には、関わり方の選択肢まで渡せます。

少し年齢が上がると、子どもは相手の性格やグループの空気も見始めます。ここでは、「がんばって合わせる」だけでは足りません。「近くにいすぎない」「2人きりを避ける」「別の子と組む」「先生に席や班のことを相談する」といった距離の取り方も立派な対処です。

この時期の子どもに必要なのは、強くなることだけではありません。自分に合わない関係を見分ける感覚です。ここが育つと、関係に飲み込まれにくくなります。

苦手な友達と交流させることは、条件が合えば教育になります。

苦手な友達と関わる経験には、たしかに学びがあります。ただし、それは無理をさせることと同じではありません。教育になるのは、安全で、小さくて、終わり方を調整できる交流です。少し苦手だけれど、話し合えば戻れる相手なら、協力や調整の練習になりやすいでしょう。

たとえば、意見がぶつかりやすい子と、先生の目が届く場で短い活動をする場面です。図工で役割を分ける。係の仕事を順番にする。休み時間に短く同じ遊びをする。このくらいの長さなら、相手を好きになるためというより、折り合いのつけ方を学ぶための経験になりやすいです。

反対に、毎回からかわれる、仲間はずれにされる、物を取られる、強い言い方で支配されるといった関係は別です。そこでは交流を増やすことが教育になるとは言いにくいです。自分を守ることのほうが先です。

学術的な根拠が示していることがあります。

友達関係は、気分の問題だけではありません。学校への向き合い方や、自分の価値の感じ方ともつながっています。学童期の研究では、学校で受け入れられている感覚や友達との関係は、生活満足感や学業の達成と関係していました。友達関係が整うと、学校そのものに居場所を感じやすくなるからです。

中学年前後の研究では、相互に友達だと認め合える関係がある子ほど、自分に対する見方や友達集団への帰属感が高まりやすいことも示されています。つまり、ただ人付き合いが多いことより、安心できる関係があることのほうが意味を持ちやすいのです。

その一方で、友達からのいやがらせや仲間はずれは、授業への向き合い方にも影響します。6歳から10歳を対象にした研究では、友達から傷つけられる経験と、学校への関わり方や学業との関連が調べられています。別の研究では、関係の中で外される形の被害が、授業への参加のしにくさにつながることも報告されています。

さらに、2年生ごろから続く被害の高さが、その後の学年で人間関係にどう向き合うかに影響したという縦断研究も出ています。早い時期から苦しい関係が続くと、友達づきあいそのものに防御的になりやすい、という流れです。だからこそ、ただ慣れさせればよいとは言えません。

親の関わり方にも裏づけがあります。感情へのコーチングと呼ばれる考え方があります。これは、子どもの気持ちを否定せず、名前をつけ、扱い方を一緒に考える関わり方です。研究では、このような関わり方は子どもの感情調整を支えやすいとされています。学校で起きたことを家で言葉にできる子は、次の場面で自分を整えやすくなるでしょう。

交流させてよい苦手と、距離を取ったほうがよい苦手があります。

ここを分けて考えると、親の迷いはかなり減ります。交流させてよい苦手は、相性の問題が中心の関係です。遊び方が違う。意見がぶつかる。少し強引だけれど、話せば戻れる。こうした相手なら、先生の見守りや短い活動を通して、調整の練習になる可能性があります。

距離を取ったほうがよい苦手は、傷つきが中心の関係です。いつもばかにされる。仲間に入れてもらえない。相手の機嫌で扱いが変わる。断るとさらに強く来る。こうした関係では、仲良くする努力より、安心して過ごせる配置を考えるほうが大切です。

全米乳幼児教育協会の資料でも、関係を使って相手を動かすようなふるまいは、年齢が上がるほど見えやすくなる形の攻撃として扱われています。見えにくいぶん、大人が軽く受け取りやすいのですが、子どもにとってはかなり消耗することがあります。

家でそのまま使いやすい声かけがあります。

いやなことを言われた日にかけたい言葉です。

「それはしんどかったね」です。この一言が先にあるだけで、子どもは話しやすくなります。そのあとに、「そのとき何て言えた」「言えなかったら、次は何て言えそう」と続けると、出来事が練習の形に変わります。

苦手な子と同じ班になったときにかけたい言葉です。

「仲良しにならなくていいよ。困らないやり方を考えよう」です。ここで大切なのは、好きになることを目標にしないことです。「挨拶はする」「決めることだけ話す」「迷ったら先生に聞く」といった、小さな約束のほうが現実的です。

休み時間に避けたくなるときにかけたい言葉です。

「ずっと一緒にいなくて大丈夫です」です。苦手な相手に近づかないことは、逃げではなく調整である場合があります。そのうえで、「でも、困ることがあったら1人で抱えないでね」と支えると、避けるだけで終わりにくくなります。

自分の子にも言い方の強さがあると感じたときです。

「あなたの気持ちは分かるよ。でも、その言い方だと相手はつらいね」です。子どもの肩を持つことと、全部を正当化することは違います。気持ちは受け止めながら、伝え方は直す。この順番のほうが、子どもは聞き入れやすいでしょう。

受験を考える家庭ほど、友達関係を成績のように見ないほうが落ち着きます。

小学校受験や中学校受験を視野に入れていると、協調性や社会性という言葉が気になりやすくなります。そのため、学校で苦手な子がいること自体を、将来の不利として感じることがあります。

ただ、見たいのは人気者かどうかではありません。いやなことがあったときに、話せるか。授業や係の活動で最低限の協力に戻れるか。しんどい関係を1人で抱え込まないか。このあたりです。受験のためにも、学校生活のためにも、必要なのは完璧な社交性ではなく、揺れても戻れることです。

家庭でできることも大きくはありません。毎日長く聞き出す必要はないです。「今日、楽だったことはあった」「しんどかったことはあった」「次はどうしたい」の3つのうち、どれか1つを聞くだけでも十分です。言葉にして終える習慣は、心の整理に役立ちます。

学校への相談は、評価ではなく場面で伝えるほうが動いてもらいやすいです。

先生に相談するときは、「あの子が苦手みたいです」だけでは広がりにくいことがあります。そうではなく、「グループ活動で意見をさえぎられると黙ってしまう」「休み時間に近くへ来ると別の場所へ逃げる」「給食の時間にからかわれた日は帰宅後に疲れが強い」といった場面で伝えるほうが具体的です。

お願いもシンプルで大丈夫です。近くで見ていてほしい。席や班の組み方を少し配慮してほしい。1人になりやすい時間を見てほしい。こうした共有は、子どもを弱くするものではなく、安心して力を出せる足場になります。

友達を増やすことより、自分を守りながら関われることです。

6歳から9歳は、友達づきあいが一気に現実味を帯びる時期です。好き嫌いがはっきりしてきますし、言葉のきつさや仲間内の空気にも敏感になります。だからこそ、苦手な友達がいること自体を失敗と見ないほうがよいでしょう。

親が渡したいのは、「みんなと同じように仲良くしよう」という圧ではありません。「いやなら言っていい」「無理なら離れていい」「困ったら助けを求めていい」という道筋です。少し苦手な相手との交流は、条件が合えば学びになります。けれど、傷つく関係まで我慢して続ける必要はありません。

関係を広げることより、戻れる場所を増やすことです。この考え方のほうが、子どもの学校生活を長く支えやすいと言えます。

参考文献。

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