安全な睡眠環境を守り、家族に合う方法で続けます。
夜中にふと目が覚めて、隣の赤ちゃんの胸が上下しているかをそっと確かめることがあるかもしれません。寝顔は穏やかでも、心のどこかに「このまま安全に眠っていてほしい」という不安が同居していることがあります。だからこそ、家で整える睡眠環境を、できる範囲で安全な形に近づけておくことは、大人の安心にもつながります。
赤ちゃんは、柔らかい布団よりも、硬めで平らな寝床で仰向けに眠るほうが安全だとされています。周りにふわふわした物を置かないことや、生後6か月ごろまでは同じ部屋で見守ること、室温やたばこの煙に気をつけることも、世界中で共通して大切にされている考え方です。そのうえで、文化や住まい方の違いを尊重しながら、各家庭の事情に合う形を探していくことが現実的なやり方だと言えます。
赤ちゃんの眠りを支える、安全の土台をつくります。
安全な睡眠環境というと、難しい専門用語を想像して構えてしまう人もいるかもしれませんが、基本になるのはとてもシンプルな発想です。それは「赤ちゃんが呼吸しやすく、顔や鼻や口がふさがれない寝床を用意する」ということです。この考え方を土台にして、細かい工夫を積み上げていきます。
乳幼児突然死症候群と呼ばれる、明らかな原因が分からない死亡例や、窒息などの事故を減らすために、日本でも海外でも共通して、「あお向けに寝かせること」「硬く平らな寝具を使うこと」「顔の周りをすっきりさせておくこと」が重要だとされています。これらは一度に完璧に守らなければならないルールというより、できるところから積み上げていく安全の目安と捉えるとよいでしょう。
硬めで平らな寝具と、仰向けの姿勢が基本になります。
赤ちゃんの寝床は、やわらかく沈み込む布団よりも、硬めで平らなマットレスや敷き布団が望ましいとされています。体が沈み込み過ぎると、顔が布団に埋もれやすくなり、息苦しさや窒息の危険が高まるからです。厚手の低反発マットや、体が深く沈むようなマットレスは、大人にとっては心地よくても、赤ちゃんには向かない場合があります。
姿勢については、1歳になるまでは仰向けで寝かせることが推奨されています。仰向けのほうが、うつぶせや横向きよりも、突然死や窒息のリスクが低いとする研究結果が積み重ねられているためです。昼寝でも夜でも、基本は仰向けを守り、医師から特別な指示がある場合のみ例外的な姿勢をとるようにすると安心です。
寝床には枕やぬいぐるみを置かず、顔の周りをすっきりさせます。
赤ちゃんの寝床に、かわいい枕や大きなぬいぐるみを飾りたくなる気持ちは自然なものです。しかし、柔らかい物は、寝返りをしたときに顔を覆ってしまうおそれがあります。厚手の毛布、ふかふかの掛け布団、クッションなども同じ理由で注意が必要です。
安全性を優先するときは、赤ちゃんの寝床には硬めのマットレスとシーツ、体に掛ける物は必要最小限にとどめ、顔と頭の周りには何も置かない形を目指します。ぬいぐるみや飾りは、赤ちゃんが起きている時間の遊び場所に移し、眠る場所は機能的でシンプルに整えていくと、気持ちの切り替えもしやすくなります。
ソファや授乳クッションで寝かせる習慣は避けます。
授乳のあと、そのままソファや授乳クッションの上で赤ちゃんが眠ってしまう場面もよくあります。けれども、柔らかく形が変わるソファや、真ん中がくぼむ授乳クッションの上は、長い時間眠る場所としては安全とは言えません。体がずり落ちて首が曲がり過ぎたり、クッションに顔が埋もれたりする危険があるからです。
最近は、授乳用のクッションについても「眠る場所としては使わないこと」を呼びかける動きが世界的に強まっています。授乳のときに短時間使うのはよいとしても、赤ちゃんが眠り込んだら、できるだけ早くベビーベッドやベビー布団など、硬く平らな寝床にそっと移す習慣をつけていくことが、命を守ることにつながります。
生後6か月ごろまでは、同じ部屋で見守ります。
日本の行政機関や海外の小児科学会も含め、多くの専門家は、生後6か月ごろまでは大人と同じ部屋で赤ちゃんを寝かせることを勧めています。同じ部屋にいることで、呼吸の様子や寝息の変化、咳き込みなどに気付きやすくなり、夜間の授乳やおむつ替えもしやすくなるからです。
ここで大切なのは、「同じ部屋で眠ること」と「同じ寝床で眠ること」を分けて考えることです。安全性の観点からは、赤ちゃん専用の寝床を用意し、大人とは別の寝具で眠るほうがよいとされています。家が狭いからといって無理に赤ちゃん用の部屋を作る必要はありません。同じ部屋にベビーベッドやベビー布団を置き、その中で仰向けに眠らせる形を目指します。
赤ちゃん専用のベッドや布団を、家の事情に合わせて選びます。
住まいが畳中心であれば、床にベビー布団を敷いて専用のスペースを決める方法があります。ベビーベッドを置ける余裕があれば、柵のあるベッドは上のきょうだいが誤って寝床に入り込むのを防ぐ役割も果たします。どちらを選ぶ場合でも、赤ちゃんの寝る場所を大人の寝具からはっきり分けておくことが大切です。
大人と同じ布団で川の字になって寝る習慣がある家庭でも、赤ちゃんだけは固めの小さな寝床を用意して、横に並べて置くという工夫ができます。添い寝に近い距離を保ちながら、寝具そのものは分ける形です。完全にベッドを分けることが難しい場合も、「同じ布団の中で大人と密着して眠り込まない」方向に少しずつ近づけていくことで、安全性は高まっていきます。
ソファでの一緒寝やうたた寝を避けることも、大切な対策です。
疲れているときには、ソファで赤ちゃんを抱っこしたまま、つい一緒に眠ってしまうことがあります。しかし、ソファは隙間や傾斜が多く、赤ちゃんがずり落ちたり、体が挟まったりしやすい場所でもあります。大人の体とソファの間にはさまれてしまう窒息事故も報告されています。
夜中にどうしても眠気が強いときは、授乳や抱っこをベッドや布団のそばで行い、「眠くなったら赤ちゃんを安全な寝床に戻す」という流れを意識しておくと安心です。保護者自身の睡眠不足を軽くする工夫とあわせて、危険なパターンに入り込みにくい生活のリズムを探していきます。
室温と衣類と空気を整え、息がしやすい環境を保ちます。
赤ちゃんの睡眠中の安全を考えるとき、寝具だけでなく部屋の環境も見直したい要素です。特に、室温の上げ過ぎや厚着は、突然死や体調不良のリスクを高める要因として知られています。一方で、寒すぎても体に負担がかかるため、「少し涼しめかな」と感じるくらいを目安に調整していきます。
冬の夜は、つい部屋を暖め過ぎたり、重ね着をさせすぎたりしがちです。体を触ったときに、胸やおなかに触れてほんのり温かく、汗でぬれていない状態であれば、おおむね適切な温度だと考えられます。手足の先が少し冷たくても、体の中心が暖かければ大きな問題ではないと説明されることが多いです。
たばこの煙のない環境を徹底することが、命を守る大きな対策になります。
乳幼児突然死症候群のリスクを高める要因として、喫煙の影響は世界中で一貫して指摘されています。妊娠中の喫煙だけでなく、出産後に赤ちゃんの周りで吸われるたばこの煙も、呼吸器や神経の発達に悪い影響を与えるとされています。
家の中で誰かがたばこを吸う習慣がある場合は、赤ちゃんが生まれたことをきっかけに、屋外だけにする、新しい禁煙のルールを家族で決めるといった対策を検討してもよいでしょう。家族全員にとって健康に良い変化になりますし、「子どものために生活を変えた」という実感は、育児の大きな支えにもなります。
空気をきれいに保ち、静かさにこだわり過ぎないバランスを目指します。
室内の空気を入れ替えることも、赤ちゃんにとって心地よい睡眠環境づくりの一部です。花粉や大気汚染が気になるときは、換気の時間や方法を調整しながら、こまめに空気を入れ替えます。加湿や暖房を使う場合も、機器が赤ちゃんのすぐ近くに当たり過ぎないように場所を工夫します。
完全な無音状態にこだわる必要はありませんが、急に大きな音が出るような機器は寝床の近くに置かないほうが安心です。生活音がかすかに聞こえる程度の環境でも、多くの赤ちゃんはじょうずに眠ります。家庭ごとの暮らし方を保ちながら、「極端にうるさくなく」「極端に暑くも寒くもない」状態を心がけるとよいでしょう。
文化や暮らし方を大切にしながら、安全の原則を生かします。
日本では、親子で同じ布団に入って川の字で眠る習慣や、祖父母と三世代で同じ部屋に寝る生活も珍しくありません。一方で、欧米のガイドラインでは、赤ちゃん専用のベビーベッドで一人で眠ることを強く勧めていることもあり、「どちらに従えばよいのだろう」と戸惑う人もいるでしょう。
大切なのは、文化の違いをそのまま優劣で捉えるのではなく、「安全に関する共通の原則は何か」に目を向けることです。仰向けで寝かせること、硬く平らな寝床を使うこと、顔の周りをすっきりさせること、たばこの煙や高すぎる室温を避けることなどは、ほとんどの国や専門家が共通して重要だと考えている点です。そのうえで、どのような寝具を選び、どのような距離感で一緒に眠るかは、家庭ごとに調整していく余地があります。
川の字で寝る家庭でも、安全に近づける工夫ができます。
川の字で眠ることを大切にしたい家庭では、赤ちゃんを大人の真ん中ではなく、片側に寝かせる方法があります。このとき、大人と赤ちゃんの間に、硬めの赤ちゃん用マットレスやベビー布団を置き、枕や大きな掛け布団が赤ちゃん側に流れ込まないように工夫します。
さらに一歩進めるなら、大人用のベッドの横に、柵のあるベビーベッドやベビーベッドと高さをそろえた簡易ベッドを並べ、赤ちゃんはその中で眠る形にする方法もあります。視線と手の届く近さを保ちながらも、寝具は明確に分かれているため、安全性は高まりやすくなります。
完璧を目指し過ぎず、できる工夫を一つずつ積み重ねます。
安全な睡眠環境について調べていくと、守るべきポイントがたくさんあるように感じて、かえって不安になってしまうことがあります。けれども、育児は長い時間をかけて続いていくものであり、毎日すべてを完璧に守ろうとするのは現実的ではありません。
今日からできることを一つだけ選び、少しずつ増やしていくほうが、結果的には長続きしやすくなります。例えば、「今夜からは仰向けで寝かせることを意識する」「今週中にベビー布団の周りからぬいぐるみを片付ける」「次の連休に家族で禁煙のルールを話し合う」といった具合です。安全な睡眠環境は、車のシートベルトのように、最初は意識して整え、そのうち当たり前の習慣として身についていくものだと考えると、少し気持ちが楽になります。
安全の原則を押さえつつ、家族の価値観や生活リズムを大切にしながら、自分たちなりの眠りのスタイルを育てていくことができれば、それは赤ちゃんにとっても、保護者にとっても心強い土台になります。迷いが大きいときや不安が続くときは、ひとりで抱え込まずに、自治体の相談窓口や小児科、助産師などの専門家と一緒に考えていく道も、いつでも開かれています。
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こども家庭庁 赤ちゃんが安全に眠れるように 1歳未満の赤ちゃんを育てる人へ 日本の行政が示す安全な睡眠環境のポイントを整理した資料です。
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乳幼児の推奨睡眠時間や、静かで安全な環境づくり、仰向けで寝かせることの重要性などが解説されており、世界的な合意の方向性を知ることができます。
世界保健機関 Your life your health Making sure newborns and children under 5 years sleep safely 睡眠時間や環境の整え方に関する国際的なガイドです。
米国疾病予防管理センター Helping Babies Sleep Safely 硬く平らな寝具や、柔らかい寝具が危険になる理由などが分かりやすく説明されています。




