イヤイヤ期

叩く・噛むが増えてきたら…。0〜2歳のサインを安全につかまえる関わり方

叩くや噛むが出た時は、安全を守りながら気持ちの出口を作ります。

0歳から2歳ごろの子どもは、まだ言葉より先に体が動きやすく、強い不安や怒りや疲れがたまると、叩くや噛むといった行動で気持ちを表すことがあります。驚くような姿に見えても、多くの場合は「どうしていいか分からないほどつらい」というサインだと受けとめると、関わり方が少し変わってきます。

その場で一番大切なのは、大人が冷静でいることと、子どもの安全と周りの人の安全を確保することです。そのうえで、体を落ち着かせるきっかけや、気持ちを言葉にする練習を少しずつ重ねていくと、叩くや噛む以外の伝え方も育ちやすくなります。

まずは距離と環境を整えて、けがのリスクを減らします。

手が振り回されたり、体当たりしそうな様子が見えた時は、注意する言葉より先に物理的な距離を取ることを意識します。近くにいたきょうだいやペットはそっと離し、角のあるテーブルや硬い床など、ぶつかると危ない場所から少しでも遠ざけます。噛みつこうとしている時は、腕や指を勢いよく引き抜くのではなく、子どもの口元からゆっくり離すように意識し、姿勢を変えて噛みつきにくい位置に動きます。

大きな声で叱ると、その刺激自体がさらに興奮の材料になってしまうことがあります。可能であれば、テレビや大きな音から離れた静かな場所に移動し、照明を少し落とすなど、五感への刺激を減らしてあげると落ち着きやすくなります。抱きとめられる余裕があれば、後ろからそっと包み込むようにして「安全な枠」を作り、そのまま安全な方向へ移動しても良いでしょう。

体を使った「落ち着く合図」で、気持ちのブレーキを一緒にかけます。

叩いたり噛んだりしている最中は、長い説明はほとんど耳に入りません。0歳から2歳ごろは、まだ自分だけの力で気持ちのブレーキをかけるのが難しい時期なので、大人がそばで「一緒に落ち着く練習」をしていくことが大切です。

例えば、深呼吸を合図にするなら、「せーの」と声をかけながら大人がゆっくり息を吸って吐き、「いっしょに、1回息をすうよ」とテンポを合わせてあげます。手の運動も役に立ちます。両手を子どもの手の前に出して「ぎゅっと握って、ぱっとひらく遊びをしようか」と誘い、ぎゅっと力を入れてから一気に開く動きを何回か一緒に行うと、体の力が少し抜けていきます。

こうした体を使った切り替えを、怒っていない時にも短時間で繰り返し遊んでおくと、「この動きをすると落ち着く」という記憶がたまり、実際の場面でも思い出しやすくなります。子どもによって合いやすい方法は違うため、歌を小さな声で口ずさむや、抱っこで体を左右にゆっくり揺らすなど、その子にとって落ち着きやすい型を一緒に探していきます。

落ち着いた後に、短いルールと代わりの伝え方を確認します。

体の緊張が少しゆるんでから、「人を叩いたり噛んだりすると、とても痛いこと」「叩かれると心もびっくりしてしまうこと」を、短い言葉で伝えていきます。「叩いたらだめ」だけよりも、「叩かれると、ここがとても痛いね」「歯で噛まれると、皮膚が傷ついて悲しいね」と、何が起きるかを具体的に話すとイメージしやすくなります。

そのうえで、「いやな時は、手じゃなくて言葉で教えてね」「おもちゃが欲しい時は、押さずに『貸して』って言ってみようか」など、代わりに使ってほしい言い方を一緒に練習します。ここでも、1回の場面で伝えるルールは1つに絞ると、子どもが受けとめやすくなります。大人がその後の場面で、できた瞬間を逃さず「今、手で叩かないで言えたね」と静かに認めることで、少しずつ新しい表現が定着していきます。

けがや自傷が見られる時は、早めに医療や専門機関につなぎます。

叩くや噛む行動がきっかけで血が出るほどのけがにつながったり、自分の頭を壁に繰り返し打ちつけるなど、自分の体を傷つけるような様子が続く時は、早めに専門家の目を借りることが大切です。顔色が悪い、呼吸が苦しそうに見える、反応が鈍いといったサインがあれば、ためらわずに救急外来や小児救急に相談します。

また、叩くや噛む場面が毎日のように起きて家族が消耗している時や、保育園や幼稚園などの集団生活でトラブルが続く時も、一人で抱え込まないことが何よりのポイントです。かかりつけの小児科や、地域の保健センターや子育て支援窓口に相談すると、発達の特性や生活リズムの見直し、親子の関わり方のサポートなど、家庭だけでは気付きにくい視点から助言を受けられます。

叩くや噛む行動は、子どもの中でうまく言葉にならない気持ちの出口として現れていることが多いです。安全を守りながら、大人が落ち着きの土台を貸してあげることで、少しずつ別の表し方が育っていきます。うまくいかない日があっても、「今日は危なくなりそうな場面で距離を取れた」「一緒に深呼吸を1回できた」など、小さな変化を大人側の成長として受けとめていくことが、長い目で見た支えになります。

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American Academy of Child and Adolescent Psychiatryの家族向け解説です。

乳幼児期の叩くや噛むといった攻撃的な行動について、その背景と家庭での対応方法、専門家への相談の目安をまとめた資料です。子どもの発達の中でよく見られる行動であることと、頻度や強さによっては専門的な支援が必要になることが丁寧に説明されています。

Fighting And Biting, Facts for Families No.81, American Academy of Child and Adolescent Psychiatry。

NHSによる子どものかんしゃくと行動への対応ガイドです。

イギリスの国民保健サービスが提供する、幼児のかんしゃくや「いや!」が続く時の基本的な関わり方の解説です。安全を確保しながら落ち着くのを待つこと、肯定的な声かけや一貫したルールづくりが有効であることなどが、保護者向けに分かりやすく紹介されています。

Temper tantrums in toddlers, NHS。

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