0〜2歳のイヤイヤ期は、親のイライラ対策から整えます。
0歳から2歳ごろの子どもは、小さなことで顔を真っ赤にして泣き続けたり、床に寝転んで動かなくなったりします。毎日のごはんやおむつ替えのたびにイヤイヤが続くと、親の側も心がすり減っていくように感じることがあります。
子どもの行動を落ち着かせる近道は、目の前のイヤイヤだけをどうにかしようとすることではなく、親が自分のイライラを整えることと、イヤイヤが起こりにくい環境を用意しておくことだと考えられます。この2つを「タイムアウトと環境調整」としてセットで意識すると、少しずつ毎日の負担が軽くなります。
夕方に増える「なんでもイヤ」は、成長中のサインです。
夕方、やっとごはんの準備ができたころに、子どもがスプーンを投げて、いすから抜け出そうとして泣き出すことがあります。お風呂に誘ってもイヤ、パジャマもイヤという状態が続くと、「どうしてここまで」と思わずため息が出るかもしれません。
0歳から2歳の子どもは、感じていることやしてほしいことを言葉でじょうずに伝える力がまだ育っている途中です。自分の思いをうまく出せない分、体全体を使った大きな泣き方や、物を投げる行動になりやすくなります。多くの研究では、こうしたかんしゃくは、この時期の発達の一部であり、親の関わり方が悪いから起きているわけではないと説明されています。
とはいえ、どれだけ発達の一部だと理解していても、毎日続くと疲れてしまいます。そこで役に立つのが、親のイライラをいったん落ち着かせるタイムアウトと、そもそもイヤイヤが起こりにくいように事前に整えておく環境調整です。
イライラを和らげる「タイムアウトと環境調整」という考え方です。
ここでは、「タイムアウトと環境調整」という短い言葉で考え方をまとめておきます。タイムアウトは、子どもや親が短い時間その場から離れて、気持ちを静めるための小さな休憩のことです。環境調整は、空腹や眠気や刺激の多さなど、イヤイヤの引き金になりやすい条件をできるだけ減らしておく工夫のことです。
多くの小児科や子育て支援の分野では、体罰ではなく、こうした非暴力なしつけの方法がすすめられています。非暴力なしつけとは、たたいたり怒鳴ったりせずに、行動のルールをわかりやすく伝え、守れた時にはしっかり認めるやり方です。
タイムアウトと環境調整を組み合わせると、「イヤな行動をやめさせるために怒鳴る」のではなく、「落ち着きやすい土台を作りながら、小さな休憩で切り替える」という方向に発想をずらすことができます。親のイライラも、子どものしんどさも、どちらも少し軽くしていくことがねらいです。
0〜2歳の子どもに合わせたタイムアウトの使い方です。
タイムアウトと聞くと、長時間別室に閉じ込めるような厳しいイメージを持つかもしれません。ここで扱うタイムアウトは罰ではなく、親子がいったん離れて呼吸をととのえるための、やわらかい休憩として考えます。
怖がらせない、短くて予測できるタイムアウトです。
0歳から2歳の子ども向けのタイムアウトは、とても短く、数十秒から長くても数分にとどめることが多くすすめられています。時間の長さそのものよりも、「一度落ち着いたら、すぐに元の生活に戻れる」という感覚を伝えることが大切です。
例えば、叩く行動が出たときに、「叩くと痛いから、少しお休みしようね」と短く伝え、テーブルから少し離れた安全な場所に一緒に移動します。そこで子どもが落ち着いてきたら、「戻ろうか」と声をかけて、何事もなかったように普段の遊びや食事に戻ります。
このとき、暗い部屋にひとりで閉じ込めたり、長時間説教を続けたりすると、不安や恐怖が強くなります。タイムアウトは「怖い部屋に行く時間」ではなく、「いったん落ち着くための小さな寄り道」だと伝わるように工夫することが望ましいとされています。
タイムアウトの前後の声かけが、安心感を支えます。
タイムアウトは、ただ黙って席を移すだけでは、子どもにとって理由がわかりにくくなります。短くてもよいので、「さっき大きな声が出たね」「叩かれると痛いから、お休みするね」という形で、起きた出来事と言葉を結びつけてあげると、少しずつ自分の行動と気持ちを整理しやすくなります。
終わりの声かけも同じくらい大切です。「もう大丈夫そうだね」「戻ろうか」と、落ち着いたことを伝えながら、普通の関わりに戻します。必要以上に説教を続けずに、穏やかな日常に戻る経験をくり返すことで、「気持ちは大きくゆれ動いても、また元に戻れる」という感覚が親子の間に育っていきます。
0〜2歳では、「親のタイムアウト」も大きな助けになります。
子どもより先に限界が来てしまう日もあります。何度も同じイヤイヤが続いたり、寝不足が重なったりすると、どんな親でもイライラが強くなります。そのときに役立つのが、親のタイムアウトです。
子どもが安全な場所にいて、けがの心配がないのであれば、「ママも少しお水を飲んでくるね」「パパも少し深呼吸してくるね」と伝えて、数十秒だけ別の部屋で肩の力を抜く時間を取ります。ほかの家族がいる場合は、「ちょっと代わってもらえる」とお願いして、あえてバトンタッチすることも1つの方法です。
親が落ち着きを取り戻してから関わり直したほうが、子どもにとっても安心感があります。自分の気持ちを整える行動を見せることは、子どもに「つらいときは一度休んでいい」というメッセージを伝えることにもつながります。
イヤイヤを減らすための環境調整の工夫です。
タイムアウトは「起きてしまったイヤイヤ」に対する対応ですが、環境調整は「そもそもイヤイヤが大きくなりにくいようにしておく」ための準備です。0歳から2歳のイヤイヤは、空腹や眠気や刺激の多さなど、毎日の暮らしの中の条件と深く結びついています。
空腹と眠気を先にケアします。
眠いときやお腹が空いているときは、大人でも機嫌が悪くなりやすくなります。子どもではその傾向がより強く、ちょっとしたきっかけで激しい泣き方につながります。買い物や通院など、子どもにとって負担になりやすい予定は、できるだけ昼寝のあとや、おやつで小腹が満たされている時間帯に入れるようにしてみると、イヤイヤの回数が減ることがあります。
食事の時間がどうしても遅くなる日は、早めに小さなおにぎりや一口サイズの野菜スティックなどを用意しておくと、空腹による不機嫌を和らげやすくなります。いつも完璧にそろえる必要はありませんが、「この時間帯は崩れやすい」というパターンに気づいたら、少し前倒しで休憩や補食を入れておくと安心です。
刺激の量を整えて、静かな時間を作ります。
大きな音やまぶしい光、人の多さなどの刺激が重なると、0歳から2歳の子どもは、頭の中に入ってくる情報の多さに耐えきれなくなり、突然泣き出すことがあります。テレビやスマートフォンの音が常に流れている環境も、知らないうちに負担を積み重ねていることがあります。
家の中では、食事や寝る前の時間だけでも、テレビを消して照明を少し落とすなど、静かな雰囲気を意識して作ってみるとよいでしょう。外出先では、長く並ぶ場所や待ち時間が長い場面では、お気に入りの絵本や小さなおもちゃを持っていき、子どもが安心できる世界に少し戻れるようにしておくと、イヤイヤの高まりをやわらげやすくなります。
イヤイヤの前に選択肢を示して、気持ちを尊重します。
0歳から2歳のころは、自分で決めたい気持ちが強くなる一方で、選べる範囲が狭かったり、言葉でうまく伝えられなかったりするために、行き場のないイライラがたまりやすくなります。このギャップを少し埋める方法として、簡単な選択肢をあらかじめ用意する工夫があります。
例えば、「青い服と赤い服どちらがいい」「抱っこで行くか、自分で歩いて行くか選んでね」といった声かけは、大人が守りたいルールを保ちつつ、子どもに小さな主導権を渡す方法です。選ぶ経験が増えることで、「自分の気持ちが大事にされている」という感覚が育ち、イヤイヤの強さや長さが少しずつ変わっていくことがあります。
親の心を守る小さな工夫です。
子どものイヤイヤに付き合い続けるには、親自身の心の余裕が欠かせません。ここでは、特別な道具がなくても今日から試せる、小さな工夫をいくつか紹介します。
イライラに気づいたら、深呼吸とひと休みです。
胸のあたりが熱くなってきたり、声が自然と大きくなっていたりしたら、イライラのサインだと受けとめてみます。その瞬間に、「大きく息を3回吸って吐く」「ゆっくり肩を回す」など、体を通じて緊張をゆるめる動きを1つ決めておくと、怒鳴りそうになる前にブレーキがかかりやすくなります。
それでもおさまらないときは、先ほどの親のタイムアウトを使います。子どもが安全な場所にいることを確認したうえで、「少しお茶を飲んでくるね」と伝えて、その場を離れます。ほんの短い時間でも、別の空気を吸うことで、「今の言い方はきつかったかもしれない」「別の声のかけ方もあったかもしれない」と考え直す余裕が生まれることがあります。
うまくいかなかった日は、自分を責めすぎないようにします。
一度もイライラせず、いつもにこやかに子どもと向き合える親はいません。専門家の多くも、「子育てで完璧を目指す必要はない」と伝えています。大切なのは、うまくいかなかった日の自分を責め続けることではなく、「次に同じ場面が来たときに、何を1つ変えてみようか」と考えてみることです。
例えば、「次は最初にお茶を一口飲んでから話す」「買い物は昼寝のあとにずらしてみる」といった、小さな変更でかまいません。親が少しずつ試行錯誤している姿は、子どもにとっても「失敗してもやり直していい」というメッセージになります。
心配なサインが続くときは、早めに相談します。
0歳から2歳のイヤイヤの多くは、時間とともに少しずつ落ち着いていきますが、中には専門家に相談したほうが安心な場合もあります。例えば、1日に何度も激しいかんしゃくがあり、物を壊したり、人を強く叩いたりする様子が続くとき、親の側が不安や落ち込みで眠れなくなっているときなどです。
気になることがある場合は、かかりつけの小児科や、地域の保健センター、子育て支援センターなどに相談してみるとよいでしょう。日本では、子どもの発達や家族のメンタルヘルスを専門にした医療機関や相談窓口も整備されてきています。ひとりで抱え込まずに、「少し気になっていることがあって」と早めに声を上げることが、結果的に親子双方を守ることにつながります。
親子で試しながら、「わたしたちのやり方」を見つけます。
0歳から2歳のイヤイヤ期は、親にとっても子どもにとっても、初めての経験の連続です。タイムアウトと環境調整という2つの視点を持っておくと、「怒鳴らないと何も変わらない」という思い込みから少し離れやすくなります。
きょうはタイムアウトを短くしてみる、あしたは夕方前に静かな遊びの時間を作ってみるといった小さな実験を重ねながら、家庭ごとのバランスを探っていくことができます。うまくいく日もあれば、うまくいかない日もありますが、その積み重ねの中で、「この子とはこのやり方が合う」という感覚が少しずつ育っていきます。
完璧な答えを一度で見つけようとせずに、「親子で一緒に練習している途中だ」と考えてみると、イライラの中にも、小さな成長の手ごたえを見つけやすくなるかもしれません。
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参考文献です。
American Academy of Pediatrics「Effective Discipline to Raise Healthy Children」。 体罰を避けて、短時間のタイムアウトや前向きなしつけをすすめる政策文書です。
子どものしつけでは、叩くなどの体罰ではなく、非暴力の方法で行動を整えることが、長期的な心身の健康につながるとまとめられています。
Zero to Three「Toddler Tantrums 101 Why They Happen and What You Can Do」。 幼い子どものかんしゃくが発達の一部であることと、親が落ち着いて寄りそうための具体的な関わり方が紹介されています。
Raising Children Network「Toddler tantrums Why they happen and how to deal with them」。 イヤイヤのきっかけになりやすい空腹や眠気、刺激過多の説明と、それらを減らす日常の工夫が分かりやすく解説されています。
World Health Organization「Parenting for Lifelong Health for Toddlers」。 前向きなしつけと親子のあたたかな関係づくりを支える、幼児期向けのグループプログラムがまとめられています。


