イヤイヤ期

0〜2歳のイヤイヤ期、「うまくいかない日」を次のチャンスに変えるコツ

うまくいかない日は、切り替えて次のチャンスを作ります。

夕方、そろそろごはんを出したい時間に、子どもが床に寝転んで泣き始めて、何を言っても耳に入らないことがあります。親のほうも疲れがたまっていると、「さっきも言ったよね」と声が強くなり、注意すればするほどお互いに苦しくなっていきます。

0歳から2歳ごろの子どもでは、このような「うまくいかない日」があるほうが普通だと言えます。大切なのは、そうした日に自分を責め続けることではなく、「今日はここでいったん区切って、次のチャンスを作ろう」と考え直せる小さなきっかけを用意しておくことです。そのための考え方として、場面を変える工夫と、家族で共有できる合図を持つことを取り上げていきます。

こじれそうな場面は、短く区切って空気を入れ替えます。

同じ場所で同じ言い合いを続けていると、親子ともに視野が狭くなり、冷静さを取り戻しにくくなります。特に0歳から2歳の子どもは、自分の気持ちを言葉で整理する力がまだ育っている途中なので、強い刺激の中に長くいるほど、泣き方や動きが激しくなりやすいとされています。

多くの子育て支援の資料では、注意を重ねるよりも、いったん場面を切り替えることがすすめられています。大人の声のトーンや雰囲気が変わることで、子どもの脳も少しずつ「さっきとは違う時間だ」と感じ取りやすくなり、泣きや怒りから抜け出すきっかけを作ることができるからです。

抱っこで窓辺に移動して、外の空気を一緒に吸います。

こじれてきたと感じたら、「一度おひさまを見に行こうか」「風を感じに行こうか」と声をかけ、子どもを抱っこして窓辺やベランダの近くに移動してみます。外の景色や光に視線が向くと、さっきまでのやりとりから、少しだけ心が離れやすくなります。

窓の外を見ながら、親子でゆっくり息を吸って吐くことを数回くり返します。「一緒に深呼吸しようね」とあえて声に出すことで、子どもにも「今は落ち着く時間なんだ」と伝わりやすくなります。この時期の子どもは、大人の表情や呼吸のリズムから安心を感じ取る力が高いと言われており、親が落ち着きをとり戻すことが、そのまま子どもの安心につながっていきます。

好きな絵本や歌を、「落ち着く儀式」として決めておきます。

場所を変えることがむずかしいときには、その場で「落ち着く儀式」を始める方法もあります。子どもが好きな絵本を1冊選んでおき、「この絵本が出てきたら休憩の時間」という意味を持たせたり、決まった子守歌を短く歌う習慣を作ったりするイメージです。

例えば、「このパンダの絵本を読んだら、いったんおしまいにしようね」と事前に伝えておきます。実際にかんしゃくが始まったときに、その絵本をゆっくり開き、読むか読まないかは子どもに任せながら、親が静かな声でページをめくっていきます。子どもは内容そのものよりも、「いつもと同じ流れが始まった」という安心感を受け取っていることが多いと言われています。

家族で共通の言い回しを持つと、子どもに一貫性が伝わります。

同じ出来事でも、保育園ではやさしく受け止めてもらえたのに、家ではきびしく叱られたと感じると、子どもは戸惑いや不安を抱えやすくなります。逆に、家でも保育園でも似たような言葉と順番でルールが示されると、「ここでもあそこでも、同じ大人に守られている」という感覚が育っていきます。

多くの専門家は、子どもにとっての一貫性が、安心感の土台になると指摘しています。ここで言う一貫性とは、細部まで同じ対応をするという意味ではなく、「何度かくり返し経験している、なじみのある声かけや手順が用意されている」という感覚に近いものです。

保育園や祖父母と、よく使う言葉をすり合わせます。

例えば、物を投げてしまったときの対応を考えてみます。家では「投げないで」と言い、保育園では「そっと置こうね」と言っていると、子どもにとっては別々のルールに感じられるかもしれません。時間があるときに、保育士さんに「家ではこんな言い方をしているのですが、園ではどんな声かけをしていますか」とたずねてみると、共通点や違いが見えやすくなります。

祖父母とも、「叩かれたときには、まず手を止めて痛いことを伝えてから、少し離れるようにしている」と、普段の流れを共有しておくと、対応のばらつきが減ります。すべてを同じにする必要はなくても、「最初にすること」と「最後に必ず伝える一言」がそろっているだけで、子どもの安心感はぐっと高まりやすくなります。

同じ順番で伝えることで、イヤイヤの出口が見えやすくなります。

例えば、叩く行動が出たときには、「叩かれると痛いことを短く伝える」「手をそっと押さえて少し距離を取る」「落ち着いたら元の遊びに戻る」という流れを、毎回同じ順番で繰り返します。このとき、長い説教ではなく、短い言葉と体の動きをセットにすることが、0歳から2歳には合っていると言われています。

子どもは経験を通して、「この言葉が出てきたら、そろそろ終わりが近い」「この抱っこが来たら、やり直しができる」といった感覚を少しずつ身につけていきます。同じ順番の対応は、大人にとっても迷いを減らす助けになります。イライラしているときほど、「いつも通りの3ステップを思い出そう」と心の中で唱えることで、自分自身を落ち着かせる手がかりにもなります。

うまくいかなかった日こそ、親の視点の切り替えが力になります。

どれだけ準備をしていても、「今日は全部裏目に出てしまった」と感じる日があります。落ち着く儀式を始めても子どもが絵本をはねのけてしまったり、共通の言い回しを使っても泣き声がさらに大きくなったりすることもあるでしょう。

こうした日が続くと、「自分の育て方が間違っているのではないか」「この子だけうまくいかないのかもしれない」と不安になりがちです。ただ、各国の小児医療や子育て支援の情報を総合すると、2歳前後の子どもの多くが、定期的に強いかんしゃくやイヤイヤを経験していると報告されています。親の努力不足ではなく、発達のプロセスとして現れやすい時期だと捉えることができます。

完璧な対応より、「やり直しやすい関係」を目指します。

夜になってから、「あのとききつく言いすぎたかもしれない」と思い返すことがあります。そのときに、自分を責め続けるよりも、「次は最初に深呼吸をしてから話してみよう」「次は窓辺ではなく、キッチンで水を飲む時間を先に取ってみよう」と、具体的な一歩だけを考えてみることが役立ちます。

子どもに対しても、「さっきは大きな声になってごめんね」と一言そえることで、「うまくいかなかったやりとりも、話し合いでほどける」という経験を共有できます。研究でも、親子の関係が一度も乱れないことよりも、ぶつかり合ったあとに修復できることのほうが、子どもの安心感や信頼感に深く関わっていると示されています。

大人の心のエネルギーを、少しずつ補給していきます。

子どものイヤイヤに向き合うには、それなりのエネルギーが必要です。自分の睡眠が足りていないときや、仕事や家庭の悩みで頭がいっぱいのときは、どんな関わり方のコツを学んでも、実践する余裕が持てないことがあります。

だからこそ、短時間でも大人自身のための時間を意識的に取ることが大切になります。数分だけ好きな飲み物をゆっくり飲む、帰宅後には数ページだけ本を読む、週末にはパートナーや家族と役割を交代してひとりで散歩をするなど、小さな工夫でかまいません。自分の心が少し満たされているほうが、子どもの大きな感情を受け止めやすくなるでしょう。

心配なサインが続くときは、早めに専門家へつなげます。

0歳から2歳のイヤイヤやかんしゃくの多くは、一時的なものであり、成長とともに波が落ち着いていくことがよくあります。一方で、いくつかのサインがそろうときには、地域の保健センターや小児科などに早めに相談したほうが安心な場合もあります。

例えば、ほとんど毎日のように激しいかんしゃくがあり、叩く、噛む、頭を打ちつけるなどの行動が長時間続くときや、呼びかけにほとんど反応しない状態が長く続くとき、ことばや身ぶりでのやりとりが極端に少ないと感じるときなどが挙げられます。また、子どもの様子だけでなく、親自身が不安や落ち込みで眠れない日が続いている場合も、相談の対象になります。

「これくらいで相談していいのか」と迷う段階で、相談して大丈夫です。

日本では、乳幼児健診や、地域の子育て支援センターなど、親子の相談に応じる窓口が徐々に整ってきています。「こんなことで聞いていいのか」と迷う気持ちが出てきたときこそ、気軽に扉を叩いてみるタイミングだと言えます。

相談の内容は、「この泣き方が気になる」「言葉が少ないように感じる」といった小さな違和感でもかまいません。専門職は、親を責めるためではなく、一緒に状況を整理し、必要に応じて別の機関やサービスにつなぐために存在しています。早めに話を聞いてもらうことで、「今のところは様子を見ていて大丈夫そうだ」という安心を得られることもありますし、「この点だけ、もう少し詳しく調べてみましょう」という具体的な次の一歩が見えてくることもあります。

支援プログラムや学びの場を活用して、ひとりで抱え込まないようにします。

世界保健機関や各国の子ども支援機関は、親子の関係を育てるグループプログラムや、前向きなしつけを学べる講座を整えてきています。こうした場では、専門家からの情報提供だけでなく、同じ年齢の子どもを育てる保護者同士の経験の分かち合いも大きな支えになります。

「うちだけが大変なのではなかった」と感じられるだけでも、心の負担は軽くなります。そこから、「あの人がやっていた窓辺での休憩を真似してみよう」「今日からうちでも落ち着く絵本を決めてみよう」といった、小さな実験につなげやすくなります。

うまくいかない時間が、親子の新しい合図へと変わっていきます。

0歳から2歳の時期は、親子双方にとって、予想どおりにいかないことが多い時期です。うまく対応できなかった日も含めて、そのたびに「次はどう切り替えようか」「どんな合図を増やしてみようか」と考え直すことで、ゆっくりと家庭ならではのやり方が形になっていきます。

今日こじれてしまった場面が、数か月後には「ここまで来たら窓辺で休憩だよね」と笑いながら動ける合図になっているかもしれません。完璧さではなく、試行錯誤を重ねながら親子のリズムを見つけていく過程そのものが、子どもの安心の土台になっていきます。思うようにいかない日が続いたときほど、「次のチャンスを作るための途中経過だ」と思い返してみることが、少しだけ気持ちを軽くしてくれるでしょう。

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参考文献です。

American Academy of Pediatrics「Effective Discipline to Raise Healthy Children」。 体罰を避けて、発達段階に合った前向きなしつけをすすめる政策文書であり、幼児期の子どもへの非暴力的な関わり方が詳しく示されています。

研究にもとづき、叩くことや怒鳴ることではなく、落ち着いた関わりや一貫したルールが、子どもの行動と心の健康に良い影響を与えるとまとめられています。

Zero to Three「Toddler Tantrums 101 Why They Happen and What You Can Do」。 幼い子どものかんしゃくがなぜ起こるのか、そのとき大人がどう寄りそうとよいのかを、具体的な声かけや環境づくりの例とともに紹介しています。

Raising Children Network「Toddler tantrums why they happen and how to deal with them」。 空腹や眠気、刺激の多さなどがイヤイヤのきっかけになりやすいことと、その負担を減らす日常の工夫が分かりやすく整理されています。

World Health Organization「Parenting for Lifelong Health for Young Children」。 前向きなしつけと親子のあたたかな関係づくりを支えるグループプログラムの効果がまとめられており、早めの相談や支援の場を活用する意義を理解する助けになります。

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