百合学院小学校は、学力だけを急がず、人としての伸び方まで見ている学校です。
小学校選びでは、英語、進学、通いやすさのように、見えやすい条件から比較しがちです。けれど、百合学院小学校の独自性は、数字だけではつかみにくいところにあります。学校案内で示されている「3つの豊かさ」は、学校の紹介文だけに置かれた合言葉ではありません。あいさつの仕方、朝の祈り、読書の時間、礼のしかた、放課後の過ごし方まで、日々の場面にその考え方が通っています。
そのため、この学校を考えるときは、どれだけ先取りするかより、どんな人に育ってほしいかを先に置くほうが実態に近づきます。人への向き合い方を大切にしたい家庭、落ち着いた空気の中で学ばせたい家庭、学力と同じくらい毎日のふるまいを大切にしたい家庭とは、相性が見えやすい学校です。
「3つの豊かさ」が、百合学院小学校の芯です。
百合学院小学校の教育を理解するとき、いちばん大切なのは、学校が何を中心に置いているかです。公式では、「人との関わりを豊かに」「神との出会いを豊かに」「学ぶ力を豊かに」という3つの柱が示されています。ここに、この学校の空気と方向がよく表れています。
人との関わりを豊かにする、ということです。
この学校が大事にしているのは、表面だけのやさしさではありません。あいさつをする。相手の話を最後まで聞く。違う考えの人をすぐに否定せず、受け止める。困っている人に気づく。そうしたふるまいを、毎日の生活の中で育てていく考え方です。聖書の「黄金律」にふれながら、してほしいことを人にも返す姿勢を学ぶとされていますが、言いかえれば、自分中心で終わらない子どもを育てる方針だと言えます。
受験を考える家庭にとっても、ここは見落としにくいポイントです。行動観察や面接の場では、知っていることより、どう人とかかわるかが表れます。待つ場面で落ち着けるか。先生の言葉を素直に受け取れるか。周りの子どもと同じ場を気持ちよく共有できるか。百合学院小学校では、その土台がそのまま学校生活につながっていきます。
神との出会いを豊かにする、ということです。
ここで育てようとしているのは、見えないものを大切にする感覚です。命は大切なものだと知ること。感謝を言葉にすること。自分も相手も粗末に扱わないこと。目先の結果だけでは測れない心の土台を、学校全体で支えようとしているところに、この学校らしさがあります。
学ぶ力を豊かにする、ということです。
この柱は、単に勉強をがんばるという意味ではありません。公式では、神から授かった力を伸ばし、それを他者のために生かすという考え方のもとで、学力の向上に力を入れ、自分で考える姿勢を大切にしながら、全人的な成長を目指すとされています。学ぶことが、自分だけの得点競争で終わらないところが特徴です。
この見方に立つと、百合学院小学校の「学力」は少し意味が変わってきます。できる子を早く作るというより、自分の力をどう使うかまで含めて育てる学びです。だからこそ、家庭でも、正解を早く言えたことだけを褒めるより、よく聞いて考えたこと、自分の言葉で話そうとしたこと、最後までやり切ったことを丁寧に認めるほうが、この学校の方向と重なりやすいです。
礼儀が、見せる作法ではなく、毎日の習慣として育っています。
百合学院小学校の独自性が特にはっきり表れるのが、礼儀の教え方です。公式では、女子校として礼儀作法や立ち振る舞いを大切にしていることが示され、立ち止まってあいさつをすること、言葉とおじぎをきちんと分ける分離礼、高学年でのマナー教室、職員室への入室方法を1年生から指導していることなどが紹介されています。
ここで大事なのは、形だけをそろえる教育ではないということです。相手にどう届くかを考える習慣をつくる教育だと見ると、意味がよくわかります。自分の都合だけで動かないこと。場に応じた話し方を知ること。誰かに何かをお願いするときや、感謝を伝えるときの姿勢を体に入れていくこと。こうした細かな積み重ねは、受験直前だけで急につくれるものではありません。
家庭でも、過剰に厳しくする必要はありません。ただ、朝に「おはようございます」をきちんと言うこと。物を受け取るときに相手を見ること。話をさえぎらずに聞くこと。そうした小さなふるまいを自然に続けていくほど、この学校での学び方になじみやすくなります。
朝の過ごし方まで含めて、学校の世界観がそろっています。
百合学院小学校の1日は、登校したらすぐ授業に流れ込むだけの構成ではありません。公式の「小学校の一日」では、スクールバスでの登校、児童朝礼と朝の会、聖歌とお祈り、授業前の10分間読書が紹介されています。この流れを見ると、百合学院小学校が、気持ちを整えてから学びに入ることを大切にしているのが伝わってきます。
読書の時間が毎朝あることも、この学校らしい点です。低学年では読み聞かせも行われています。教室に入ってすぐに競争のスイッチを入れるのではなく、ことばと静けさにふれてから1日を始める。これは、学校の空気そのものをつくる大きな要素です。
派手さはなくても、こうした朝の積み重ねは、子どもの落ち着きに効いてきます。朝に気持ちがばらつきやすい子でも、毎日同じ流れの中で過ごすことで、学校での入り方が安定しやすくなります。受験校として見るときも、イベントの華やかさだけでなく、平日の朝にどんな空気が流れているかを感じ取ることが大切です。
英語は、特別な飾りではなく、日常の学びの中に置かれています。
百合学院小学校の英語教育は、見せ場だけをつくるタイプではありません。公式では、全学年で週2〜3時間の編成が組まれ、必ずネイティブの教員が関わると案内されています。読む、書く、聞く、話すの4つを切り分けずにつなげながら、日常のできごとを英語で表現する活動を学習の土台にしているのが特徴です。
学院全体の教育紹介では、小学校6年間で実質900時間を超える英語にふれる環境とされており、量だけを見てもかなり手厚い部類です。ただ、この学校の英語で注目したいのは時間数だけではありません。英語を教科として足すのではなく、異なる文化の人とも交流できることを目標に置いている点です。つまり、点を取るための英語より、英語を通じて世界との距離を縮める英語です。
英語が強い学校を探している家庭でも、この点は見分けどころになります。早く単語を覚えさせることに関心が向く家庭もありますが、百合学院小学校に合いやすいのは、英語をこわがらずに使ってみること、間違えても言ってみること、人とやりとりすることを前向きに受け止められる家庭です。英語の力をつけたいという願いと、人に向かう力を育てたいという願いが、ここでは1本につながっています。
放課後まで学校の中で続くところに、百合学院小学校らしさがあります。
百合学院小学校には、「All in School」という独自の放課後プログラムがあります。学習から習い事までを学校内で幅広く行う仕組みで、放課後の過ごし方まで学校の理念の延長に置いているのが大きな特徴です。学内で学び、遊び、挑戦しながら個性を伸ばしていく設計になっています。
学童保育にあたるナザレトクラブは、1年生から6年生までの希望者が対象で、保護者の就労が条件ではないと案内されています。宿題や自由遊びだけでなく、異学年との交流を通じて子どもの可能性を広げることが目的とされています。放課後をただ預かる時間としてではなく、育ちの時間として考えているところが印象的です。
さらに、学校内では曜日指定プログラムとして、工作や絵画、書道、バドミントン、フラダンス、英語教室、体操、花道や茶道、そろばん、プログラミングなどが用意されています。課外レッスンでは、ピアノ、声楽、チアダンスも行われています。外に出なくても、学校の中でそのまま次の学びへ移れるため、保護者にとっては段取りが組みやすく、子どもにとっては場が切れにくいという良さがあります。
ここは見逃しにくい独自性です。通学時間がかかる家庭や、共働きで放課後の動線が気になる家庭にとって、学校の中で生活がつながることは大きな安心になります。便利だから良い、で終わらず、学校の考え方の中で放課後まで過ごせることに意味があります。
少人数で見てもらえる安心感と、長く見通せる進路が両立しています。
公式の保護者の声では、少人数で指導がきめ細かいこと、上級生が下級生をお世話する環境があること、先生と児童の距離が近いことが評価されています。言葉づかいやあいさつが自然に身につくことに安心を感じている声もありました。学校の理念が、現場の雰囲気として伝わっていることがうかがえます。
学習面でも、置いていかないための仕組みがあります。公式では、1年生から5年生で希望者対象のフォローアップタイムがあり、学習のつまずきを補いながら進める体制が紹介されています。5年生の3学期からは、国語と算数のパワーアップタイムも用意され、中学校進学に向けた準備へとつながっていきます。
さらに、百合学院小学校から百合学院中学校へは、原則として学科試験を免除して進学する道が開かれていると案内されています。もちろん外部進学を考える家庭もありますが、内部進学の道があることは、6年間の先まで落ち着いて考えやすい材料になります。小学校受験は入学がゴールではありません。百合学院小学校は、その先の育ちまで見通しやすい学校です。
受験準備では、上手に見せることより、自然なふるまいを育てることが合いやすいです。
2026年度の新1年生募集要項では、入試内容として、ペーパーテスト、行動観察、運動、親子面接が示されています。ここから見えてくるのは、知識だけを見ているわけではないということです。百合学院小学校を受けるなら、机に向かう時間だけでなく、集団の中での姿、指示の受け取り方、親子のやりとりまでふくめて準備していくことが大切です。
ただし、無理に百合学院らしい子を作ろうとしなくて大丈夫です。作られた受け答えは、面接ではかえって硬く見えやすいです。この学校に合いやすいのは、呼ばれたら気持ちよく返事ができる子、自分のことばで短く話せる子、うまくできなくても投げ出さずに向き合える子です。家庭では、「早くしなさい」と急がせるより、「どう思ったの」「最後まで聞けたね」「ありがとうが言えてよかったね」と、日々のふるまいにことばを添えるほうが実りやすいです。
保護者の側も、学校の考え方を理解していることが大切です。公式Q&Aや保護者の声には、先取り一辺倒ではなく、体験や家族の時間、自然にふれることを大事にしてきたという声が見られます。たくさん詰め込んだかどうかより、家庭の空気が落ち着いているかどうかのほうが、百合学院小学校では響きやすいでしょう。
見学で確かめたいのは、派手さではなく、ことばの温度です。
百合学院小学校が気になるなら、説明会や見学では、設備の新しさや行事の華やかさだけで判断しないほうが合っています。子どもたちのあいさつが自然かどうか。先生の声かけが一方的ではないかどうか。高学年が下級生にどう接しているか。宗教の時間が、知識の説明だけでなく、生活にどうつながっているか。そこを見ると、この学校の独自性が見えやすくなります。
通学の現実も大切です。公式では、阪急園田駅、JR尼崎駅、阪神尼崎駅などからスクールバスが案内されており、帰りのバス時刻も複数設定されています。2026年度の学費案内では、入学時に入学金200,000円と施設整備費200,000円が必要で、月額では授業料、教育充実費、冷暖房費、図書費などが示されています。良い学校かどうかだけでなく、家庭の暮らしの中で無理なく続けられるかまで見ておくと、判断が落ち着きます。
百合学院小学校は、子どもを急がせる学校ではなく、育ちの向きをそろえる学校です。
百合学院小学校の魅力は、何か1つの強みだけで語りきれません。カトリックの価値観、女子教育、礼儀、英語、読書、放課後の仕組み、少人数の見守り。これらがばらばらに並んでいるのではなく、「人との関わり」「神との出会い」「学ぶ力」という軸の中でまとまっているところに、この学校の強さがあります。
受験校として見ると、華やかな実績の見せ方ではなく、毎日の生活がそのまま教育になっている学校です。だからこそ、百合学院小学校が合う家庭は、結果を急ぎすぎず、子どものふるまいと言葉の育ちを大切にしたい家庭だと言えます。入学後に伸びる力まで考えて学校を選びたいなら、百合学院小学校は、かなり静かに、けれど深く候補に残る学校です。
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参考文献。
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