早稲田実業の言葉は、そのまま使うより、家庭の言葉に戻すほうが伝わります。
志望理由を考えるとき、立派な言葉を借りるほど、家庭の輪郭が薄くなることがあります。早稲田実業学校の校風を表す去華就実という言葉は強いですが、それを暗記して話すだけでは、親子の体温が伝わりにくいです。
伝わりやすいのは、短い具体です。朝の支度で子どもが忘れ物に気づき、玄関で戻ってやり直した場面。工作で失敗して、悔しさを抱えたまま、もう一度手を動かした場面。そうした小さな出来事を、家庭の言葉で語れる形にしておくと、学校の言葉と自然につながります。
去華就実は、飾らないのではなく、実を選び続ける姿勢です。
去華就実は、華やかなものを去り、実に就くという考え方です。見た目を整えること自体が悪いのではなく、見た目に引っ張られず、意味のある中身を選ぶという態度だと言えます。
家庭の中でこの姿勢が出るのは、派手な成果より、過程に目が向くときです。できたかどうかで終わらず、どうやってそこに辿り着いたかを確かめる会話がある家庭は、去華就実の感覚と相性が良いでしょう。
家庭翻訳という合言葉にすると、志望理由が急に書きやすくなります。
ここでは家庭翻訳という言い方を置いてみます。学校の理念を借りるのではなく、家庭の出来事に戻して言い換える、という意味です。
たとえば、去華就実を家庭翻訳すると、見栄えよりも使えることを選ぶ、になります。おもちゃを買うとき、流行よりも長く遊べるものを選ぶ。服を選ぶとき、派手さよりも動きやすさを優先する。こうした選択が、子どもの日常に残ります。
もう1つだけ、場面を置きます。週末に親子で料理をするとき、子どもが卵を割って殻が落ちたとします。そこで大人がすぐに取り上げず、殻を探して取り除き、続ける流れを守る。失敗を消すより、立て直しを残す。これも去華就実の家庭翻訳です。
実学は、特別な授業の名前ではなく、目の前を学びに変える力です。
実学という言葉は、生活や社会とつながる学び、という意味で使われます。ただ、実学は特別な授業だけを指しません。目の前の出来事から問いを立て、手を動かし、言葉にして誰かに伝える。その積み重ねが、学びを自分のものにします。
家庭の中で芽を作るなら、会話の形が鍵になります。子どもが気づいたことを話したときに、正解に寄せてまとめないことです。どうしてそう思ったのかを聞き、言い直してみようかと促し、最後に子どもの言葉で締めてもらう。短い往復で十分です。
聞く力は、耳の良さではなく、受け止め直す力です。
早稲田実業の考え方を家庭に戻すと、聞く力が育つ環境を作る、に行き着きます。ここでの聞く力は、聞こえたかどうかではありません。言われたことを短く言い直し、次の手に変えられる力です。
似た考え方として、実行機能という言葉があります。段取りを組み、注意を切り替え、気持ちを調整しながら動く力のことです。子どもは生まれつき完成しているわけではなく、経験の中で育っていきます。
試験対策として詰め込むより、生活の中で繰り返すほうが強く残ります。家の用事を頼むときに、大人が結論まで言い切らず、子どもに手順を短く言ってもらう。外出前に持ち物を一緒に確認し、最後は子どもに確認の言葉を返してもらう。これだけで、聞き方と切り替えの練習になります。
系属の魅力は、進学の近道より、学びが途切れにくいことです。
早稲田実業学校は、早稲田大学系属の学校です。系属という言葉は、大学までつながる印象だけで語られがちです。けれど、家庭の視点で大切なのは、学びの連続性です。短期の成果を追い続けるより、長い時間をかけて力を育てる発想が持ちやすくなります。
一貫した環境があると、子どもは切り替えの回数が減ります。新しい場所に慣れる負荷が減る分、学びそのものに注意を向けやすいです。これは家庭にとっても同じです。行事や学びの積み重ねを見通しやすくなり、焦りが少し和らぐことがあります。
ここで誤解したくないのは、系属なら安心と単純化しないことです。
系属であることは、万能の答えではありません。通学、生活、友人関係、家庭の価値観が噛み合ってこそ、環境は力になります。合う合わないは、偏差値の話だけでは決まりません。
説明会や公開情報に触れた後、家庭の会話がどう変わるかを見てください。親子の会話が柔らかくなるなら、相性が良い可能性があります。逆に、会話が硬くなり、子どもが黙り込むなら、準備の仕方を見直す余地があるでしょう。
志望理由は、学校の言葉を借りるより、家庭の場面を短く置くほうが強いです。
志望理由は、背伸びした文章より、具体の短い場面が残ります。家庭翻訳で考えると、言葉が自然に出ます。
去華就実を、成果より過程を見ます、と言い換える。三敬主義を、相手も自分も物事も丁寧に扱います、と言い換える。実学を、目の前を学びに変えます、と言い換える。あとは、その言い換えが本当に家庭の出来事に接続しているかを確かめるだけです。
完璧な話にする必要はありません。むしろ、失敗や迷いが混ざったほうが、子どもの学びは立体になります。家庭の中で、失敗をゼロにするより、立て直し方を残してきた。その事実があれば、言葉は十分に育ちます。
最後は、今日できる小さな一歩だけを残します。
受験の是非は、家庭によって違います。今はまだ決めない、という選択も自然です。けれど、去華就実を家庭の言葉に戻す作業は、受験をするかどうかに関係なく、子どもの学びを支えます。
今日の一歩は小さくて構いません。家の用事を頼むときに、子どもに手順を短く言ってもらう。うまく言えない日は、待ってあげる。明日またやる。それだけで、聞く力と切り替えが少しずつ育ちます。
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参考文献。
公式情報と、家庭での関わりを考える助けになる資料です。
Harvard University Center on the Developing Child, A Guide to Executive Function。
Executive function and self regulation skills act like an air traffic control system in the brain.


