行事と体験学習は、受験対策より先に、子どもの土台を作ります。
小学校受験の準備をしていると、何をどれだけやれば安心できるのかが見えにくくなります。けれど当日の力は、知識の量だけでは決まりません。初めての場所で指示を聞き、手を動かし、周りの子と折り合いをつける。そうした動きの安定が、結果として子どもを助けます。捜真小学校の行事や体験学習は、この安定を「生活の形」で作っていく設計だと言えます。
ここでは「学びの手触り」という言葉が役に立ちます。
学びの手触りとは、覚えたことより先に、体が覚えている学びの感覚です。たとえば、準備を整えてから始める癖や、うまくいかないときに切り替える速さです。捜真の行事は、特別なことを足すというより、生活を少しだけ難しくして、それを自分で回せるようにしていく時間に見えます。
自然教室は、離れて過ごす時間そのものが、子どもを育てます。
御殿場にある宿泊施設で行われる自然教室は、自然の中での生活がそのまま学びになります。縦割りの班で過ごし、ハイキングやキャンプファイヤーなど、協力しないと回らない場面が続きます。上の学年になるほど、先生が常にそばにいる形ではなくなり、プログラムも子どもが進めていく時間が増えます。飯ごう炊さん(野外で鍋を使ってご飯を炊く体験です)やキャンドルライトサービス(ろうそくの灯りの中で心を静かにする時間です)のように、手順と気持ちの両方を整える活動が並ぶことで、できた実感が残りやすくなります。
受験の準備として家庭で増やしたいのは、旅行の回数ではなく、片づけて終える習慣です。荷物をそろえて、使ったら戻し、最後に確認する。自然教室のような行事は、こうした動きが身についている子ほど、安心して楽しめます。そして安心は、集中を呼びます。
低学年の体験は、学力ではなく、好奇心の起動スイッチになります。
捜真では、低学年の時間としてベタニヤタイム(体験や活動から学びを始める時間です)が紹介されています。見つけたものを持ち寄り、友だちの気づきを聞き、自分の言葉に直していく。ここで大切なのは、立派に説明することではありません。見たことを短く言い、聞いたことを一度受け取ることです。
たとえば、帰宅後の会話でも十分です。今日の出来事を全部話す必要はありません。印象に残ったことを1つだけ選び、なぜそれが残ったのかを一言足す。この短さが、考えを育てます。
校外学習は、社会を見る目を静かに育てます。
体験学習として、神奈川消防署や商店街、清掃工場、自動車工場、国会議事堂などが紹介されています。こうした見学は、知識の暗記より、世界の見え方を増やします。働く人の手元を見る。道具の置き方に気づく。順番を待つ間に、周りの様子を読む。受験当日に必要な落ち着きは、こうした場面で育つことが多いです。
理科の体験は、驚きが先に立つほど、言葉が育ちます。
捜真では、5年生の臨海実習として観音崎自然博物館で磯の生き物を観察し、学芸員の方から教わりながら学ぶ様子が紹介されています。見つける。触れない距離を守る。種類の違いに気づく。こうした過程は、理科を得意にするためだけではありません。注意深さと丁寧さが、子どもの中に残ります。
さらに、6年生では化石発掘の学習が紹介されています。化石は、答えがすぐ出ない教材です。どこを見れば違いが分かるのかを考え、見つけた情報を言葉にして、人に伝え直します。実際に、外部の学びの場で化石を使った交流授業が行われた例もあり、体験が教室の学びとつながっていることがうかがえます。
表現の時間は、上手に見せる練習ではなく、心を動かして言葉にする練習です。
捜真では、チャペルのパイプオルガンの音色や、音楽や造形に触れる機会が紹介されています。合唱や合奏、トーンチャイム(小さな鐘の楽器です)や琴の体験など、6年間を通して表現の喜びに出会う道が用意されています。表現は、正しさで採点されるものではありません。違いを受け止め、やり直し、もう一度出してみる。この反復が積み上がると、自己肯定感が安定しやすくなります。
家庭でできることは、発表の練習を増やすより、会話の往復を増やすことです。話す。聞かれる。言い直す。短い往復があるほど、面接の場面でも呼吸が整いやすくなります。
異学年が交わる場面は、思いやりが行動として見えやすいです。
自然教室が縦割り班で行われること自体が、異学年の関わりを前提にしています。上の学年は、声を張るのではなく、手元を見て助けます。下の学年は、甘えるだけでなく、自分でできる範囲を探します。受験の場でも、目立つ力だけが評価の中心ではありません。順番を守れるか。相手の手元を見られるか。困っている子に気づけるか。こうした力は、家庭の暮らしの中で育ちます。
急がせるより、待てたことを静かに受け取るほうが行動は自然になります。早くしなさい、よりも、今待てたね、のほうが残ります。小さな言葉が、子どもの姿勢を作ります。
少しだけ視点を変えると、行事は「家庭の呼吸」を整える装置にもなります。
行事の価値は、子どもだけにあります。けれど、保護者や祖父母にとっても意味があります。準備の段取りが短くなる。会話が具体になる。見通しが立つ。家の空気が整うと、子どもは安心して挑戦できます。挑戦できる子は、当日に崩れにくいです。
体験の価値を誤解しないための、1つだけ大事な注意があります。
体験が多いほど合格に近づく、という話ではありません。体験は、詰め込むものではなく、振り返りで育つものです。短い言葉で振り返り、次の日に持ち越さない。これができると、体験は学びになります。できないと、ただのイベントで終わります。
体験活動は人づくりの「原点」です。
文部科学省。平成28年度 文部科学白書。特集 子供たちの未来を育む 豊かな体験活動の充実。
小さな一歩は、今日の暮らしの中にあります。
明日の予定を一緒に確認する。持ち物をそろえて、使ったら戻す。感想は1つだけ選んで話す。順番を待てたら、静かに認める。こうした小さな動きが、捜真の行事の中で力になります。受験をするかどうかに関係なく、子どもの中に「学びの手触り」が残っていくでしょう。
お子さまにぴったりのランドセルが簡単に見つかる!
ランドセル診断はこちらからご利用いただけます。
過去問や参考書はこちらPR
おすすめのお受験用品や教育PR
関連記事はこちら
参考文献です。
捜真小学校の行事や体験学習、体験活動の教育的な位置づけは、次の資料で確認できます。
- 学校法人捜真学院 捜真小学校。学校紹介と体験学習の考え方を確認できます。 公式ページを開く。
- 学校法人捜真学院。施設紹介の自然教室。御殿場での自然教室の概要を確認できます。 施設紹介を開く。
- 学校法人捜真学院。自然教室の活動報告。学年ごとの日程や活動内容の例を確認できます。 活動報告を開く。
- 学校法人捜真学院。5年生臨海実習。磯の観察や博物館での学びを確認できます。 臨海実習を開く。
- 文部科学省。体験活動の教育的意義。体験活動が求められてきた背景を確認できます。 文部科学省のページを開く。
- 文部科学省。平成28年度 文部科学白書。体験活動の意義や定義を確認できます。 白書のPDFを開く。
- 成城学園初等学校。化石を使った交流授業の記録。外部の学びの場での交流例を確認できます。 記録を開く。


