10〜12歳は、失敗から戻れる自信を守る時期です。
10〜12歳の非認知能力は、いろいろありますが、この時期にいちばん効いてくるのは、失敗したときの戻り方です。中学校受験を視野に入れる家庭ほど、模試や小テストで成績の上下が増えます。そこで大切になるのは、できる自分を守り続けることではありません。崩れたあとに戻れる自分を、家庭の中に作っておくことです。
点が取れた日は、誰でも前向きになれます。差が出るのは、取れなかった日の翌日です。机に向かうまでが長引く。会話が減る。ため息が増える。そういう日が続くと、勉強そのものより、自信のほうが先に削れていきます。だからこそ、失敗を大事件にしない扱い方を、先に覚えておくほうが安全です。
名付けるなら、戻れる自信です。
ここでは、失敗との付き合い方を、戻れる自信という言葉でまとめます。戻れる自信とは、うまくいかなかったあとでも、自分の足でまた始められる感覚です。点数が高いこととは別の力です。むしろ、点数が揺れる時期だからこそ、この感覚が支えになります。
戻れる自信がある子は、失敗しても、自分がダメだと決めつけにくいです。次はどうするかに意識を移しやすいです。戻れる自信が薄い子は、失敗が長く残り、次の行動までが遠くなります。親の声かけや家庭の段取りは、ここに直接効きます。
非認知能力の記事を一緒に読むと、今の位置が見えやすいです。
高学年は、できることが増える分だけ、できないことも目につきます。自分で比べる材料が増えるからです。家の中で、評価の目線だけが強くなると、子どもは戻りにくくなります。今の学年の特徴を先に押さえると、親の構えが落ち着きます。
低学年からの流れも確認したいときは、土台の考え方も一緒に読むとつながります。今の悩みが突然出てきたものではなく、積み上がりの途中だと分かるだけで、会話の空気がやわらぎます。
土台からの流れも確認したいときに役立つページです。
受験は、家庭の方針や地域差、学校差で形が変わります。どれが正解と決めにくいからこそ、家庭の中の共通言語を持っておくとぶれにくいです。戻れる自信は、その共通言語になりやすいです。
悔しさは短く言葉にすると、翌日に残りにくいです。
10〜12歳は、悔しさが強くなります。悔しさは悪いものではありません。悔しいから、次を考えられます。ただ、悔しさが長引くと、次の日に残ります。ここで効くのが、短く言葉にすることです。
ポイントは、説明を増やさないことです。気持ちをほどく言葉は、短いほうが届きます。悔しかったね。思ったより取れなかったね。ここまで言えたら十分です。理由探しは、そのあとでいいです。
たとえば、模試の結果を見て、子どもが黙ったまま鉛筆をいじり続ける場面があります。親はつい、次は何をするかを話したくなります。でも、最初にやるのは、気持ちの名前を付けることです。悔しかったね。ここで一度、空気がほどけます。ほどけたら、次の話が通ります。
言葉にするのが苦手な子もいます。その場合は、親が決めつけずに選択肢を置くと助けになります。悔しいのかな。疲れたのかな。どっちが近い。こう聞くと、子どもは答えやすいです。答えが出なくても、黙っていていいよと言えるだけで、戻り道が残ります。
声かけは、点数より戻り方に向けると続きます。
いい点だったねだけだと、点が落ちた日に会話が止まります。受験を考える家庭ほど、会話の材料が点数に寄りがちです。そこで、戻り方を支える言葉に切り替えます。
途中で戻れたのがよかったね。見直しができたね。苦手を避けずに触れたね。こうした言葉は、評価というより、手順への注目になります。手順は再現できます。再現できるものを褒められると、子どもは次の行動が分かりやすくなります。
ここで視点を少し変えます。子どもが求めているのは、正しい答えより、失敗しても自分は大丈夫だという確かさです。親が点数の実況者になると、子どもは評価され続ける感じになります。親が手順の伴走者になると、子どもは自分で戻る感覚を掴みやすくなります。
言い方も工夫できます。頑張ったねと言うだけでは、何が良かったかが残りにくいです。時間どおりに始められたね。分からない問題に印を付けたのが上手だったね。最後に丸付けまで行けたね。こう言われると、次も同じ動きができます。
祖父母が関わる家庭でも同じです。できたできないの話に寄ると、子どもは会話を避けやすくなります。今日は座れたんだね。短い時間でも続けたんだね。こうした言葉は、安心を増やします。安心は、継続の燃料になります。
親の役割は、解くことより環境を作ることです。
高学年になると、親が教えるほど、ぶつかりやすくなります。分かっているのにできない。分からないのに説明される。どちらも苦しいです。そこで、教えるより、環境を作るほうがうまく回りやすいです。
時間を決めます。教材を減らします。机の上を軽くします。休憩を先に入れます。こういう段取りは、子どもの自立を邪魔しにくいです。子どもが自分で考える余地を残したまま、迷う時間だけを減らせます。
特に中学校受験を考える家庭は、教材が増えやすいです。増えるほど、やるべきことが見えにくくなり、不安が増えます。教材を減らすのは、努力を減らすことではありません。戻る道を短くすることです。
生活面も効きます。睡眠が削れると、気持ちの切り替えが難しくなります。お腹が空くと、集中が落ちます。こうした当たり前の部分ほど、成績より先に心を揺らします。食事や睡眠の話は、受験の話より受け取りやすいこともあります。
祖父母が助ける場合は、助言より段取りが役に立ちます。静かに飲み物を置く。必要なプリントを一緒に探す。帰宅後の流れを整える。こうした支えは、子どものプライドを傷つけにくく、家庭の空気も荒れにくいです。
受験を意識するなら、崩れた日の戻り方が勝負になります。
受験期に本当に差がつくのは、崩れない家庭ではありません。崩れたあとに戻れる家庭です。戻るために必要なのは、行動の最小単位です。最小単位とは、これだけならできるという大きさです。
机に座るだけでもいいです。問題を開くだけでもいいです。1問だけやるでもいいです。終わったら丸を付けるまでができたら十分です。最小単位は、やる気がある日に作るのではなく、崩れた日に使うために作ります。
家庭で型にしておくと、戻る速度が上がります。悔しい。もう無理。と言われたら、まず短く受け止めます。悔しかったね。ここで止めます。そのあとで、次の1つだけを決めます。次はここだけやろう。今日はここで終わろう。こうすると、戻りやすくなります。
型は短いほど強いです。気持ちを言葉にする。次を1つ決める。終わりを決める。この3つだけでも、崩れた日が短くなります。崩れた日が短くなれば、受験期が長く感じにくくなります。
もう1つだけ、比喩を置きます。戻れる自信は、気持ちの筋肉のようなものです。筋肉は、1回で急に増えません。小さい負荷を繰り返して、じわじわ増えます。失敗の日に戻れた経験が、同じように積み上がります。
失敗の話をするときに、先回りしておきたい注意があります。
戻り方を作る話は、根性論ではありません。無理に頑張らせる話でもありません。むしろ、無理が続く前に、戻る道を短くする工夫です。家庭の雰囲気が荒れていると感じるときほど、手順に落とすと落ち着きます。
ただし、食欲や睡眠が大きく崩れる。朝に動けない日が続く。学校に行くこと自体がしんどい。そういう状態が重なるときは、家庭だけで抱えないほうがいいです。担任の先生や学校の相談窓口、地域の相談先に話すことは、子どものための段取りです。恥ではありません。
小学校受験や中学校受験で、今日からできる小さな一歩です。
いきなり習慣を変える必要はありません。戻れる自信を守るために、今日からできることは小さいです。点数の話をする前に、気持ちを短く受け止める一言を置きます。悔しかったね。思ったより取れなかったね。ここで止めます。
そのあとで、次の1つだけを決めます。次は見直しを1回増やそう。次は計算だけ丁寧にやろう。次は時間を測ってみよう。こういう次は1つが、子どもの戻り道になります。
最後に、終わりを決めます。今日はここで終わろう。ここまでで十分だよ。終わりが決まると、次の日が始めやすくなります。受験は長いので、毎日勝つより、毎日戻れるほうが強いです。
小学校受験でも中学校受験でも、家庭の形はそれぞれです。合うやり方も違います。だからこそ、戻れる自信という軸だけは、家庭の中に残しておくといいでしょう。失敗の日が短くなると、受験の時間も、少しだけ軽くなります。
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参考文献。
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Harvard University Center on the Developing Child, A Guide to Executive Function, 自己調整の基本が確認できます。
Executive function and self regulation skills act like an air traffic control system in the brain.
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OECD, Skills for Social Progress, 社会情動的スキルが人生の結果に関わる整理が確認できます。
Social and emotional skills help improve education, health, and life satisfaction.
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文部科学省, 中央教育審議会資料, 非認知能力の定義と考え方が確認できます。
非認知能力は、意欲、意志、情動、社会性に関わる要素からなる。
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Yeager DS, PubMed, Growth mindset intervention, 学習の受け止め方が成績や履修に関わる研究概要が確認できます。
A short online growth mindset intervention improved grades among lower achieving students.
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PNAS, Hecht CA 2023, Growth mindset, 学校現場での介入研究の考え方が確認できます。
Values aligned intervention can foster growth mindset related outcomes in teachers.
