不安をほどいて、受験期にも崩れにくい土台に戻ります。
0〜6歳の非認知能力で不安が出やすいのは、家庭が正解探しの場所になってしまうときです。これをやれば伸びる。やらないと遅れる。そういう空気が強いほど、親子の会話は細くなります。会話が細くなると、切り替えが重くなります。切り替えが重いと、叱る回数が増えます。ここで家庭が疲れていきます。
この章の目的は、配慮を増やすことではありません。必要な配慮だけ残し、続く形へ戻るための見取り図を持つことです。受験をするかどうかに関わらず、生活が安定すると、子どもは戻りやすくなります。戻りやすいと、育ちが積み上がりやすくなります。
非認知能力は、厳しさで作るものではありません。安心と枠の両方がそろうと、子どもは落ち着きやすくなります。落ち着きがあると、挑戦が続きます。挑戦が続くと、受験期にも崩れにくい土台になります。
厳しさで育てる話ではありません。安心と枠の両方が必要です。
非認知能力を、我慢を覚えさせる話だと誤解しやすいです。けれど、我慢だけを積み上げると、心が折れやすくなります。逆に、安心だけで回そうとすると、切り替えが難しい日が増えます。だから、安心の言葉を置きつつ、行動の枠は残す。このバランスが、戻れる力を育てます。
安心の言葉は、気持ちを否定しない短い返事です。悔しかったね。びっくりしたね。いまは嫌だったね。ここまでで十分だよ。こう言われると、子どもは気持ちの渦から出やすくなります。
枠は、次の動きを短く示すことです。いったん水を飲もう。次は靴をはこう。ここで待とう。おしまいにしよう。枠があると、気持ちが揺れても行動へ戻りやすくなります。
安心と枠は、順番も大切です。荒れている最中に正しさを増やすと、余計に止まりやすいです。まず安心を置いて、次に枠を渡します。泣いてるね。大丈夫だよ。次はここから。こういう順番が、家庭の空気を戻します。
不安が強い日は、言葉を増やすより見通しを増やします。
不安が強い日は、説明が長いほど子どもは動きにくくなります。聞けないからではありません。頭の中がいっぱいになるからです。そんな日は、見通しを短くします。いまはこれ。次はこれ。ここまで。ここまでと言えるだけで、親も落ち着きます。
見通しがあると、子どもは切り替えやすくなります。切り替えやすいと、叱る回数も減りやすいです。叱る回数が減ると、家の会話が戻ります。会話が戻ると、また見通しが作れます。小さな循環が生まれます。
言葉は、評価より、手順に寄せると持ち直しやすいです。
できたできないの評価が中心になると、家庭が疲れます。評価は短期的には動くことがありますが、長く続くと、子どもは正解探しで止まりやすくなります。親も、結果の上下で気持ちが揺れやすくなります。
そこで、言葉を手順に寄せます。よく聞けたね。待てたね。迷ったのに戻れたね。こう言うと、子どもは次に何を続ければよいかが分かりやすいです。親も、焦りから戻りやすいです。
手順の言葉は、結果を無視するための工夫ではありません。結果が揺れても続けられるようにする工夫です。受験期は結果が揺れます。揺れる前提で、家庭の言葉を作るほうが安全です。
褒め方も同じです。大げさに褒める必要はありません。短く具体で十分です。いま待てたね。最後まで聞けたね。やり直せたね。こういう言葉は、次の行動へ戻る道になります。
子どもへの声かけは、修正より先に戻り道を渡します。
間違いを見つけたとき、すぐ直したくなります。けれど、直されるほど子どもは受け身になりやすいです。受け身になると、止まりやすくなります。だから、短い問いを挟みます。どこが気になる。次はどうする。もう1回やってみる。こう言われると、子どもは自分で戻りやすいです。
戻れた瞬間を拾います。いま気づけたね。戻れたね。ここが強いよ。結果より先に、戻れたことを言葉にします。戻れた経験は、自信に変わりやすいです。
受験との接点は、能力の自慢ではなく、生活が安定することです。
非認知能力がそのまま受験に有利だと決めつける話にはしません。けれど、短い合図を聞いて動く。場面が変わっても切り替える。初めての場所でも手順に戻る。こうした力は、受験期にも役立ちやすいです。
ここで大切なのは、土台を壊さないことです。睡眠。食事。生活リズム。これが優先です。土台が崩れると、学びも遊びも重くなります。重くなると、親の声も強くなります。強くなると、子どもは固まりやすくなります。だから、積み上げは土台を守れる範囲で行います。
小学校受験を考える家庭でも、中学校受験を視野に入れる家庭でも、結局は同じです。生活が回ると、力が出やすいです。回らないと、知っていることも出にくいです。非認知能力は、生活を回すための技術として扱うほうが、家庭の負担が軽くなります。
文部科学省の資料でも、家庭での養育が基盤であり、家庭と両輪で進めるものだと整理されています。家庭の土台を守る視点は、受験期にもそのまま役に立ちます。
受験を意識するときほど、短く終えるが効きます。
受験期は、やることが増えます。増えるほど、家庭は長くやろうとします。けれど、長さは疲れを呼びます。疲れが出ると、切り替えが難しくなります。だから、短く終えるを守ります。短く終えると、明日に残せます。明日に残せると、家の空気が荒れにくくなります。
短く終えるために必要なのは、終わりの合図です。あと1回でおしまい。時計が鳴ったらおしまい。片付けたらおしまい。終わりが見えると、切り替えが軽くなります。
祖父母が関わるときは、助言より、安心を増やすと力になります。
祖父母が関わるときは、善意ほど助言が強くなりやすいです。うまくやらせたい。失敗させたくない。その気持ちが、評価の言葉を増やします。評価が増えると、親子は疲れやすいです。子どもは緊張しやすいです。
おすすめは、応援の形をそろえることです。大丈夫だよ。ここまでで十分。いまの頑張り、ちゃんと伝わってるよ。こうした言葉は、親の余裕を増やし、子どもの安定につながります。
祖父母が味方の言葉を揃えると、家庭は戻りやすくなります。親は、誰かに評価される場ではなく、支えられる場だと感じやすいです。子どもも、できるかどうかより、戻れるかどうかで進めます。戻れると、挑戦が続きます。
祖父母の言葉は、結果より手順に寄せると穏やかです。
祖父母が褒めるときは、手順を拾うと効きやすいです。最後まで聞けたね。待てたね。やり直せたね。いまのやり方、いい感じだね。こういう言葉は、子どもに次を残します。
助言をしたくなる場面が来たら、言葉を短くします。まず休もう。今日はここまでで十分。温かいものを飲もう。場を閉じる言葉は、家庭の味方になります。
不安をほどく見取り図は、合図と見通しと手順の言葉です。
正解を探しすぎると、家庭の空気が細くなります。空気が細いと、子どもは切り替えにくくなります。切り替えにくいと、親も強い声になりやすいです。だから、見取り図として持つのは、合図と見通しと手順の言葉です。
合図は、終わりと次です。見通しは、順番を減らすことです。手順の言葉は、できたできないより、聞けた、待てた、戻れたを言うことです。これがそろうと、家庭は持ち直しやすいです。
不安が強い日があっても大丈夫です。崩れたときに戻れる道が短いほど、家庭は続きます。続く家庭は、特別に強い家庭ではありません。戻れる道を持っている家庭です。
今日できる小さな一歩は、言葉を1つだけ置き換えることです。
今日から大きく変える必要はありません。評価の言葉を1つ減らして、手順の言葉を1つ増やします。よく聞けたね。待てたね。迷ったのに戻れたね。どれか1つだけで十分です。
その言葉が出た日は、家庭が少し戻れます。戻れると、明日も続けやすくなります。続けやすくなると、不安がほどけていきます。0〜6歳の土台は、そういう静かな変化で育っていきます。
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関連リンク
参考文献。
Serve and return interactions are responsive back and forth exchanges between a young child and a caring adult.
Harvard Center on the Developing Child(親子の往復が発達の土台になるという整理が確認できるページ)
