朝と帰宅後の習慣で、感情の揺れを小さくする家庭の整え方。
朝に気持ちが荒れてしまう日が続くと、家の空気が重くなります。帰宅後に疲れが爆発すると、明日の準備まで崩れます。起きる時間と出発の時間を固定し、やることの順番を毎日同じにするだけで、波は小さくできます。帰宅後はカバンの片付けと、今日の楽しかったことの振り返りをいっしょに行い、できた行動を具体的にほめると、明日の意欲が育ちやすくなります。
気持ちを支える、順番のレール。
ここで扱うキーワードは、順番のレールです。順番のレールとは、次に何をするかが毎日ほぼ同じで、子どもが見通しを持てる状態のことです。見通しとは、先の流れが頭の中で読めることです。先が読めると、迷いが減ります。迷いが減ると、イライラの火種が小さくなります。
受験を考えているご家庭ほど、平日の揺れはそのまま学びのロスになります。逆に、朝の運びと帰宅後の整え方が決まっていると、勉強の量を増やさなくても、落ち着いて机に向かえる時間が残りやすくなります。
朝の固定は、バタつきではなく安心を増やします。
朝のポイントは、起きる時間と出発の時間を固定し、その間の順番を変えないことです。人は、選ぶ回数が多いほど疲れやすいと言われます。朝の選択肢が多いと、それだけで消耗します。順番を固定すると、選ぶ負担が減り、淡々と進みます。
たとえば、まだ眠そうな顔でリビングに来た子どもが、カーテンの光で少し目を細めて、いつもの席に座る。コップを出して、朝ごはんを食べて、歯みがきをして、服を着る。毎日同じ流れだと、言葉にしなくても体が動きやすくなります。
起床から出発までを、短い流れにまとめます。
最初に決めたいのは、起きる時間の基準です。休日も大きくずらさないほうが、月曜日のつらさが軽くなります。家族の事情で難しい場合でも、週に何度かだけでも基準を守ると、リズムは戻りやすくなります。
次に、出発の時間を固定します。出発の時間が揺れると、すべてが揺れます。出発が固定されると、逆算が働きます。逆算が働くと、朝の会話が短く済みます。
そして、やることの順番を毎日同じにします。順番は、家に合う形でかまいません。大事なのは、日によって入れ替えないことです。朝の途中で順番を変えると、子どもは次の見通しを失います。見通しが消えると、不安が出やすくなります。
見通しを助ける方法として、目で見える予定表が役立ちます。予定表と言っても難しいものではありません。紙に、朝の流れを短い言葉で書くだけで十分です。字がまだ負担なら、簡単な絵でもかまいません。見える場所は、冷蔵庫の扉や、靴箱の近くなど、動線上が続きやすいです。
時間に追われて荒れやすい子には、時計よりも砂時計やタイマーが合うことがあります。タイマーは、終わりが見える道具です。終わりが見えると、切り替えが楽になる子がいます。音が苦手な場合は、光るタイプや静かな振動タイプなど、刺激が弱いものが安心です。
声かけは、長い説明より短い合図が効きます。
朝は、説得や交渉が増えるほど、疲れやすくなります。説明は夜に回し、朝は合図に寄せるほうが回りやすいです。短い合図とは、今の行動を指す言葉です。歯みがきの時間です。靴をはく時間です。といった具合です。
もし抵抗が出たら、正しさで押さえないほうが安全です。正しさは、火に油になる日があります。代わりに、次の小さな行動に落とします。コップを出すだけにします。顔を洗うだけにします。そこまでできたら、次の行動に移します。小さく刻むと、気持ちの揺れは収まりやすいです。
帰宅後は、片付けと振り返りで気持ちを着地させます。
帰宅後は、疲れが前に出ます。疲れた状態で次の予定を詰めると、感情が乱れやすくなります。だからこそ、帰宅後の順番が効きます。カバンの片付けと、今日の楽しかったことの振り返りを、セットにします。
片付けは、叱る場面にしないほうが続きます。片付けは、明日の自分を助ける行動です。助ける行動だと伝わると、気持ちが荒れにくくなります。場所は固定します。プリントの置き場、連絡帳の置き場、ハンカチの置き場を決めます。決まると、探す時間が減ります。探す時間が減ると、親の焦りが減ります。親の焦りが減ると、子どもも落ち着きやすいです。
カバンの片付けは、最初に終わる形にします。
帰宅直後は、まだ体が動く子もいます。最初に短く片付けを終わらせると、後が楽です。逆に、だらだらしてから片付けに入ると、体が重くなり、抵抗が強くなりがちです。
やり方は単純で十分です。カバンから出すものを決め、置く場所を決め、毎日同じにします。完璧は要りません。置けたことを成功にします。成功を積むと、帰宅後の空気が整います。
今日の楽しかったことは、短く拾うほど続きます。
振り返りは、長い会話にしなくてかまいません。今日の楽しかったことは何だった。と聞いて、出てきたらそれで終わりでも大丈夫です。言葉が出ない日もあります。その日は、親が先に短く話してかまいません。今日は電車が空いていて助かった。といった程度で十分です。子どもは、話す量より、受け止めてもらった感覚で安心します。
振り返りは、感情の整理にもつながります。感情の整理とは、楽しかった、悔しかった、びっくりした、などの気持ちに名前をつけることです。名前がつくと、気持ちが少し外に出ます。外に出ると、体の中のざわざわが落ち着きやすくなります。
ほめ方を変えると、明日の意欲が育ちます。
できた行動を具体的にほめると、子どもは次の行動を選びやすくなります。すごいね、えらいね、だけでも悪くありませんが、何ができたのかが見えにくい日があります。そこで、行動をそのまま言葉にします。
たとえば、カバンからプリントを出して置けたね。靴をそろえられたね。時間になったら席に来られたね。こうした言葉は、結果ではなく動きを見ています。動きを見てもらえると、子どもは自分のやり方を覚えます。覚えると、次の日も同じようにできます。
受験を意識すると、できたかできないかに目が行きがちです。そこに寄り過ぎると、家庭が小さな採点会場になります。家庭は、安心できる場所でもあります。安心があるから挑戦ができます。挑戦ができるから、学びが伸びます。家庭の役割を守るためにも、ほめ言葉は結果より行動に寄せるほうが穏やかです。
うまくいかなかった日も、次につながる形にします。
朝に荒れてしまった日、帰宅後に崩れてしまった日もあります。その日は、反省会を長くしないほうが立て直しやすいです。代わりに、次の順番だけ決めます。明日は、起きたらカーテンを開ける。帰ったらカバンを置く。そこだけで十分です。
感情が大きく揺れるとき、本人の努力不足だと誤解されることがあります。けれど、体質やストレスで朝がつらくなる子もいます。そういうときほど、叱るより、リズムをゆっくり戻すほうが回復に近づきます。必要なら、学校や園、医療や相談窓口に頼ってかまいません。家庭だけで抱えないことも、立派な整え方です。
視点を少し変えると、親の負担も減ります。
子どものリズムは、家庭のリズムに影響されます。特に、寝る時間の雰囲気は伝わりやすいです。親が忙しい時期ほど、夜の準備が後ろにずれ、朝が苦しくなることがあります。ここで大切なのは、親が完璧になることではありません。親の負担が減る形に調整することです。
たとえば、朝に詰まりやすい工程を、夜に寄せます。服を決める、持ち物をそろえる、連絡帳に目を通す、そうした作業は夜のほうがやりやすい日があります。夜に済むと、朝の会話が減り、親の声も穏やかになりやすいです。
親の穏やかさは、子どもにとって安心材料です。安心材料が増えると、子どもは切り替えがしやすくなります。切り替えができると、朝の出発が安定し、帰宅後の宿題や学びの時間にも入りやすくなります。
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参考文献。
e ヘルスネット(厚生労働省)。こどもの睡眠についての基礎と目安が確認できます。 ページを開く。
適切に対処していくには「早起き・早寝」という基本的な生活習慣から見直すことが必要です。
文部科学省。「早寝早起き朝ごはん」国民運動の資料や関連情報が確認できます。 ページを開く。
すこやか親子21(こども家庭庁)。未就学児の睡眠指針の本文が確認できます。 資料を開く。
国立成育医療研究センター。子どものストレスと生活リズムの考え方が確認できます。 資料を開く。
国立成育医療研究センター。子どもの生活習慣形成に関する調査研究の概要が確認できます。 報告書を開く。
CDC(米国疾病予防管理センター)。子どもの心の健康と生活行動の関係が確認できます。 ページを開く。
