ことばの目安を知り、焦らず見守る。3歳から5歳の会話が育つ家庭の整え方。
3歳から5歳のことばは、伸び方に個人差があっても、少しずつ増えていれば大丈夫だと言えます。小学校受験や中学校受験を考えている家庭でも、まだ決めていない家庭でも、いちばん大切なのは、子どもが伝えたい気持ちを失わないことです。ことばは急に伸びる日もあれば、足踏みする週もあります。今日の様子を小さく受け止め、明日につなげるほうが、結果として近道になりやすいでしょう。
ことばの貯金という見方で安心を増やす。
ここでは、ことばの育ちを、ことばの貯金として捉えます。派手に増える日だけが良い日ではなく、毎月、少しずつ積み上がっていくことに意味があります。増え方がゆっくりでも、子どもが伝えようとしていて、大人が受け取れているなら、そのやり取り自体が貯金になっています。
目安は、できたかできないかを裁くためではなく、見守り方を整えるためにあります。前月よりも表現が増えているか、言葉や身ぶりで伝えようとしているか、家族以外にも通じる場面が増えているかを、静かに確かめていきます。
3歳ごろは二語文が増え、会話の往復が芽を出します。
3歳ごろは、二語文(2つの言葉をつなげた短い文)が増えてきます。「ママ、きて。」「これ、いや。」のように、短くても意味が伝わる表現が増える時期です。ここで大事なのは、文を長く言わせることではなく、やり取りが続く経験を増やすことです。
たとえば朝の支度で、靴下を持ってきてくれたとします。そのときに「ありがとう。」で終わらせず、「手伝ってくれたんだね。うれしいよ。」と受け取りを少しだけ広げると、子どもは自分の行動が言葉につながる感覚を持ちやすくなります。質問で追い詰めず、受け止めてふくらませるのがコツです。
家族以外にも通じる言い方は、練習で作るというより、生活の中で自然に磨かれます。急かされない場面で、言い間違いを責められない場面で、子どもは安心して言葉を出します。
4歳ごろは文が伸び、出来事の順番が語りになっていきます。
4歳ごろになると、文が長くなりやすく、出来事を並べて話す場面が増えます。「きょう、こうえんいって、すべりだいして、ころんで、でもだいじょうぶだった。」のように、体験の順番がそのまま言葉になります。うまく話せない日があっても、体験が言葉になろうとしている時点で、育ちの流れはあります。
この時期は、話の途中で大人が先回りして言い換えすぎないほうが良いことがあります。言いたいことを奪われると、子どもは話す意欲を失いやすいからです。待つ時間は短くても効きます。言葉が出てくるまで数秒だけ待つだけで、子どもの中で文章が組み上がることがあります。
一方で、発音が聞き取りにくい時期が混ざることもあります。自治体の発達相談の案内でも、2歳から3歳ごろの不明瞭さに対して、言い直しをさせる必要はない、という趣旨が示されています。言い直しよりも、たくさん話を聞き、やり取りを重ねることが、明瞭さにつながっていきます。
言い直しをさせる必要はありません。杉並区公式ホームページ。未就学児の発達の相談。
5歳ごろは理由や気持ちが言葉になり、会話が滑らかになります。
5歳ごろは、「どうしてそう思ったのか。」「どんな気持ちだったのか。」が言葉で出やすくなります。「いやだった。」だけではなく、「とられたから、いやだった。」のように、理由が一緒に出てくる場面が増えます。ここまで来ると、会話の往復がスムーズになり、相手の反応を見ながら話す力が育っていきます。
ただし、気持ちは言葉にしにくい日もあります。疲れている日や眠い日は、ことばより行動が先に出ます。そのときは、説明を求めるより、気持ちを代弁して渡すほうが助けになります。「悔しかったんだね。」「びっくりしたんだね。」と短く添えると、子どもは自分の状態を言葉で受け止めやすくなります。
受験を意識したときに気になるのは、話の上手さより伝わり方です。
小学校受験の面接や行動観察を意識すると、言葉が達者な子が有利なのでは、と不安になりやすいでしょう。けれど、場に合った返事ができること、困ったときに助けを求められること、相手の話を聞こうとする姿勢があることのほうが、日常でも学校生活でも効いてきます。流暢さだけで評価が決まる場面ばかりではありません。
ここで見方を少し変えます。ことばは、子どもの能力の話に見えがちですが、実は家族の聞き方の影響も大きいものです。大人が忙しさで返事を急ぐと、子どもは短い言葉で済ませる癖がつきます。逆に、短い返事でもきちんと受け止められる家庭では、子どもは安心して言葉を足していきます。受験のために新しい教材を増やす前に、返事の仕方を整えるほうが効くことがあります。
祖父母の関わりも力になります。昔の遊びや行事の話を聞かせることは、語彙(言葉の数)を増やすだけでなく、出来事を順番に語る練習にもなります。大人側の正しさを押しつけず、子どもの言い方をいったん受け止めてから、自分の言葉を重ねると、会話が穏やかに続きます。
伸ばそうとしすぎると、ことばの貯金が減る日があります。
ことばを伸ばしたい気持ちが強いほど、子どもの返事を試すような聞き方になりやすいものです。「それは何。」「どうしてそうなるの。」と続けると、子どもは会話ではなくテストだと感じます。すると、答えが合っているかどうかが怖くなり、黙ることがあります。短い返事しか返ってこない日があっても、状況が悪化したとは限りません。
会話は、正解探しより、受け取られた感覚が中心です。子どもが言い終える前に言葉を奪わないこと、言葉が出なかったときに責めないこと、言い方が幼くても笑わないことが、じわじわ効きます。ことばの伸びは、安心の上に乗ります。
生活の整え方で、ことばの伸びは変わりやすいです。
3歳から5歳は、睡眠や遊びの質が、会話の粘りに影響しやすい時期です。眠いと、言葉で説明するより先に泣いたり怒ったりしやすくなります。外遊びや手先を使う遊びが増えると、体験が増え、話す材料が増えます。体験が増えると、言葉は自然に増えます。
画面を見る時間が長い日が続くと、受け身の時間が増え、会話の往復が減りやすいことも知られています。家庭の事情で完全にゼロにする必要はありませんが、短い時間でも大人と話す時間を確保すると、ことばの貯金は保たれます。世界保健機関でも、5歳未満の子どもの座りっぱなしの時間やスクリーンの時間に関する指針がまとめられています。
相談の目安は、遅れの有無だけでは決まりません。
ことばの心配をするとき、話せる単語の数だけに目が向きがちです。けれど、理解があるか、指さしや視線で伝えようとしているか、やり取りを避けていないかなど、全体のバランスも大切です。家庭の不安が強いときは、早めに相談して良いでしょう。相談は、診断を急ぐためだけではなく、家での声かけの工夫を増やすためにも役立ちます。
具体的には、聞こえが気になるとき、呼びかけへの反応が弱いとき、会話の往復がほとんど成立しない状態が続くときは、健診やかかりつけ医に相談しやすいポイントです。言語聴覚士(ことばや聞こえの専門職)に相談できる窓口もあります。自治体の発達相談も、迷ったときの入口になります。
今日からできる小さな一歩は、質問を増やすことではなく受け取りを増やすことです。
子どもの言葉が短い日は、短いままで受け取って大丈夫です。「そうなんだね。」で終わらせず、「そう思ったんだね。」と気持ちを少しだけ添えると、子どもは安心します。絵本の読み聞かせも、読み切ることより、途中で一言交わすほうが効くことがあります。「この子、どんな顔かな。」と聞くのではなく、「楽しそうだね。」と感じたことを渡すと、会話が続きやすいでしょう。
受験を考える家庭でも、今は考えていない家庭でも、ここは同じです。ことばは、教え込まれると細りやすく、受け止められると太りやすいものです。子どもの中で言葉が形になるまで、少し待つ余白を作ってみてください。その余白が、家庭の空気を変え、子どもの話し方を変えていくことがあります。
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参考文献。
言い直しをさせる必要はありません。
発音や会話の相談目安、家庭での受け止め方の考え方を確認できます。公式ページへ。
聞こえやことばの機能を使って行われます。
言語聴覚士への相談の入口と、対象となる悩みの整理に役立ちます。公式ページへ。
言葉の獲得に関する領域「言葉」としてまとめ、示したものです。
幼児期の育ちを捉える枠組みとして、言葉を含む領域の位置づけを確認できます。公式ページへ。
the maximum recommended time these children should spend on screen based sedentary activities。
5歳未満の子どもの座りっぱなしやスクリーンの時間に関する指針を確認できます。公式ページへ。
Talks with you in conversation using at least two back and forth exchanges。
3歳ごろのやり取りの目安を、具体例つきで確認できます。公式ページへ。
