国立小の教室風景、毎日の授業はどんな雰囲気か
朝の教室に入ると、国語の教科書を開く子、友だちと小さな声で話す子、黒板の前で準備をしている先生など、国立小学校の教室も一見すると普通の小学校とよく似た光景が広がっています。 子どもたちは国語や算数や体育や図工など、馴染みのある教科を学び、休み時間には校庭で走り回り、給食を食べて帰ります。 日々の流れだけを見ると、特別なことばかりをしているわけではなく、生活のリズムは他の小学校と大きく変わらないと言えます。
ただ、その中身に目を向けると、国立小ならではの工夫が静かに入り込んでいます。 子ども自身が調べて発表する時間が多かったり、タブレット端末を使って友だちと意見を共有したり、学び方そのものを試しながら授業がつくられている場面がよく見られます。 研究的な授業が日常の中に溶け込んでいることで、「いつもの授業の延長線上に、少し先の学び方がある」という雰囲気が生まれています。
いつもの時間割の中に、新しい学び方が少しずつ入っている
国立小学校の授業の特徴を一言でまとめるなら、「ふだんの教科の中に、新しい学び方の実験が少しずつ混ざっている」という姿です。 子どもたちは、基本的には他の小学校と同じ時間割で生活しながら、その教科の中身や進め方が、大学と連携した研究テーマにもとづいて工夫されていることが多くなります。
国語と算数の授業、聞くだけで終わらない対話の時間
国語の授業では、先生の説明を聞くだけでなく、登場人物の気持ちを自分の言葉で話したり、ペアになって意見を交換したりする場面が増えています。 黒板には先生の字だけでなく、子どもが書いた考えが並び、それをもとにクラス全体で「なぜそう思ったのか」を確かめ合う時間がよく取られます。
算数でも、答えが合っているかどうかだけではなく、「どうやって考えたか」を説明することが大切にされています。 自分のノートを実物投影機で映したり、タブレットに書いた解き方を共有したりしながら、同じ問題にもいろいろな解き方があることを知っていく流れが多く見られます。 間違いを責めるのではなく、「どこでつまずいたか」「どこまでは合っていたか」を丁寧に振り返る雰囲気があることも、国立小の教室風景の特徴と言えるでしょう。
生活科と総合学習、探して考える時間が積み重なっている
低学年の生活科や、高学年の総合的な学習の時間では、身近なテーマを自分たちで調べてまとめる活動がよく行われます。 たとえば、学校の周りの町を歩きながら気づいたことを写真に撮り、教室に戻って地図の上に並べ、「安全な道」「危険な場所」「好きな場所」など自分たちなりの視点で整理していくような学習です。
調べ学習の進め方や、まとめ方や発表の仕方については、大学の先生と一緒に考えた研究テーマにもとづいていることがあります。 同じ単元でも、毎年少しずつやり方を変えながら、「どんな声かけをすると子どもが自分の言葉で話しやすいか」「どの順番で活動すると学びが深まりやすいか」を確かめている学校も多くあります。 子どもたちにとっては、その年の授業がいつもの日常ですが、裏側では先生たちが実験と改善を重ねているイメージです。
タブレット端末を使った協働学習、画面の向こうにも学びが広がる
一人一台のタブレット端末を使った授業も、国立小では珍しくなくなっています。 国語で登場人物の気持ちを付箋のように書き込んで共有したり、理科で実験の結果を写真と一緒にまとめたりするなど、紙のノートとタブレットを行き来しながら学ぶ場面が多く見られます。
子ども同士が同じ画面を見ながら意見を書き合うことで、「発表が苦手でも画面なら言いやすい」という子どもの声が生まれることもあります。 同時に、タブレットの扱いに不安がある子や、画面に気を取られやすい子もいるため、先生たちは使い方や時間の区切り方を工夫しながら授業を組み立てています。 道具を使うことそのものが目的ではなく、「話し合いや振り返りをしやすくするためにどう使うか」という観点で試行錯誤が続いていることが多いです。
大学とつながる学校、授業が研究の舞台になる場面
国立小学校の多くは、国立大学の附属学校として運営されています。 附属学校は、大学で教員を養成するための教育実習の場であり、学校教育の新しい方法を試す研究の場でもあると位置づけられています。 つまり、子どもたちの日常の教室が、そのまま「未来の先生を育てる教室」でもあり、「新しい授業づくりを試す教室」でもあるということになります。
教育実習の先生と一緒に学ぶ、二人の先生がいる教室
附属小学校では、大学から教育実習の学生が来て、一緒に授業をする期間があります。 子どもたちにとっては、いつもの先生に加えて「若い先生」が教室にいる期間があり、少し緊張しながらも、新鮮な気持ちで授業に向き合う時間になります。
実習生が行う授業も、事前に指導の先生と何度も相談して計画されます。 どんな問いかけをすると子どもが考え始めるのか、どんな板書なら振り返りやすいのかなどを一緒に話し合い、授業のあとには「うまくいったところ」と「次に直したいところ」を振り返ります。 子どもたちの学びと同時に、「教える側が学ぶ場」として教室が使われている点は、附属小ならではの風景と言えるでしょう。
授業公開の日、全国から先生が集まる特別な時間
国立小学校の多くは、年に数回、授業を公開する研究会や研修会を開いています。 その日は、全国各地から先生が見学に訪れ、教室の後ろにはメモ帳を持った大人たちが並び、授業の進め方や子どもの反応を静かに見守ります。
授業のあとには、授業者と見学に来た先生たちが集まり、「どの場面で子どもの表情が変わったか」「どの問いかけが子どもの考えを引き出したか」などを話し合う時間が持たれます。 子どもたちにとっては、少し緊張する一日かもしれませんが、その経験を通して、人前で話す力や、いつもと違う雰囲気でも自分のペースを保つ力が育っていく面もあります。 一方で、こうした特別な日ばかりではなく、多くの日は落ち着いた日常の授業が続いているというバランスも大切にされています。
子どもの日常と国立小の授業、通わせる家庭が知っておきたいこと
国立小学校の授業には、たしかに「新しい学び方を試す場」という顔がありますが、子どもにとっては、家を出てから帰るまでの長い時間が日常の生活そのものです。 ここでは、通う子どもと家庭の視点から、授業の特徴との付き合い方を考えてみます。
変化の多い授業を楽しめる子と、落ち着いたペースを好む子
探究的な学習や、タブレットを使った協働学習は、「自分で考えることが好き」「友だちと話し合うのが好き」という子どもには、とても刺激的で楽しい時間になります。 一方で、変化が多い授業や、話し合いが続く授業が少し苦手な子どもにとっては、疲れを感じやすい場面もあります。
重要なのは、「国立小だからどんな子にも必ず合う」「国立小だから落ち着きがない」という極端なイメージで判断しないことです。 同じ学校の中にも、静かな活動を丁寧に積み重ねる授業もあれば、体を動かしながら意見を交換する授業もあります。 学校見学や説明会を通して、教室の雰囲気や先生の声かけの様子を感じ取り、「わが子の性格と比べてどうか」をゆっくり考えることが大切です。
家庭学習とのバランス、親が支えやすい学び方かを考える
国立小の授業は、学校での時間だけで完結するわけではありません。 調べ学習の続きとして家で資料を読むことがあったり、発表の準備を家で練習したりすることもあります。 タブレットを持ち帰る場合は、家庭での使い方やルールについても、学校と家庭が一緒に考えていく必要があります。
家庭としては、「宿題の量が適切か」「子どもだけで進めやすいか」「親のサポートがどの程度必要か」という視点も大切になります。 国立小だから特別に宿題が重いとも言い切れませんが、探究的な学習が多い学校ほど、家での準備や振り返りが増える傾向はあります。 入学後の生活をイメージしながら、「今の暮らしにどのくらい上乗せできそうか」を考えておくと、後から慌てずに済みます。
倍率だけでなく、授業と生活の相性を見て選ぶ視点
国立小学校というと、どうしても倍率や難易度に目が向きがちです。 もちろん、「どのくらいの競争なのか」を知ることは、受験計画を立てるうえで役に立ちます。 一方で、実際に通い始めてからの数年間を支えるのは、毎日の授業の雰囲気と生活リズムです。
国立小の授業は、大学と連携した研究の舞台であり、未来の学校づくりを支える大切な実験の場でもあります。 その恩恵として、子どもたちは新しい学び方にいち早く触れることができますが、同時に、変化や試行錯誤の中で育つという側面も受け止める必要があります。 「倍率が高いから価値がある」のではなく、「この学び方の中で、うちの子はどんな表情で過ごすだろうか」という想像から、国立小という選択を考えてみることが大切だと言えるでしょう。



