誤飲と窒息を想定して、日常の動線から守りをつくります。
歩き始めたばかりの子どもが、床に落ちた小さな部品を口に運ぼうとする場面を見て、ひやりとした経験がある方は多いのではないでしょうか。0歳から2歳ごろの子どもは、世界を確かめるために何でも口に入れてしまう時期にあり、誤飲と窒息のリスクがとても高いと言えます。だからこそ、事故が起きてから慌てて対処法を調べるのではなく、ふだんの生活動線と「もしも」の初動をあらかじめ整えておくことが、子どもと家族の安心につながります。
ここでは、ボタン電池や磁石、薬や洗剤などの危険な物をどう片づけるか、万が一飲み込んでしまったかもしれない時に何を優先して考えるかを、0歳から2歳の子どもと暮らすイメージに沿ってまとめます。完璧を目指すよりも、「まずここから押さえておこう」という感覚で読んでいただければうれしいです。
誤飲と窒息が起こりやすい年齢と、気をつけたい物の種類です。
生後数か月の赤ちゃんは、寝返りやハイハイが始まると一気に行動範囲が広がります。生後5か月から10か月ごろにかけて、手に触れた物を片っ端から口に運ぶ行動が増え、1歳から2歳にかけては、自分で歩き回りながら興味のある物を探すようになります。この時期は、大人が普段あまり意識していない場所からも小さな物を見つけてしまうため、誤飲と窒息の事故が起こりやすい時期とされています。
危険性が高い物として、ボタン電池、強力な磁石、薬、洗剤、化学薬品、小さなおもちゃのパーツ、ビー玉や硬貨などが挙げられます。特にボタン電池は、飲み込んでしまうと短時間で食道や周囲の組織を傷つけるおそれがあり、外見からは分かりにくいものの、緊急性が非常に高いと言われています。複数個の強い磁石も、腸の中で引き合い、挟まった部分が傷つく危険があります。こうした特徴を知っておくと、片づけの優先順位をつけやすくなります。
家の中の動線を見直し、危険物を生活空間から遠ざけます。
誤飲を防ぐための基本は、子どもの手の届く範囲から危険な物を物理的に減らすことです。ただ「片づけましょう」と言われても、家中をすべて変えることは難しいものです。そこで、日々の動き方に合わせて「子どもが通る道」と「大人だけが使う場所」を意識して分けていくと考えやすくなります。目安としては、大人の胸より上の高さや、鍵付きの戸棚や引き出しを「危険な物の定位置」にするイメージです。
例えば、リビングに置いてあるリモコンや電池式のおもちゃは、電池のふたが簡単に開かない物を選び、使わない時は子どもの目につきにくいボックスにまとめて片づけます。冷蔵庫の上や、高い棚の最上段など、子どもが登って届きにくい場所を決めて、ボタン電池や予備の電池、マグネットやクリップを集約するのも一つの方法です。床近くのコンセント周りやテレビ台の裏など、ほこりと一緒に小さな部品が落ちやすい場所は、定期的に掃除する習慣をつくると安心です。
ボタン電池と磁石は、特に意識して片づけます。
ボタン電池は、リモコン、電子体温計、鍵、電子カード、おもちゃなど、意外なほど多くの物に使われています。見た目が小さく丸い形で、子どもにとってはお菓子のようにも見えてしまいますが、飲み込むと短時間で内部に深刻なダメージを与える可能性があります。そのため、ボタン電池を使う製品は、ふたがしっかり閉まるかどうかを確認し、使い終わった電池もすぐにテープを巻いて封をしてから、子どもの手が届かない場所で保管します。
強力な磁石も、複数個飲み込むと腸の中で互いに引き合い、挟まった部分が傷ついたり穴が開いたりするおそれがあります。マグネットおもちゃを使う場合は、対象年齢を確認し、0歳から2歳の子どもがいる家庭では、小さな磁石がぽろりと外れない作りかどうかもチェックしたいところです。冷蔵庫に貼るマグネットや事務用品の磁石も、落ちて床に転がっていないか時々目を配るだけで、リスクをかなり下げることができます。
薬や洗剤は、使う場所としまう場所を決めておきます。
薬や洗剤、除菌スプレー、漂白剤などは、誤って口に入れると中毒症状を起こすことがあります。子どものそばで薬を出し入れすると、真似をして口に入れようとするきっかけにもなるため、なるべく別の部屋で準備してから戻る習慣をつくると安心です。飲み薬は、ふた付きの収納ボックスに入れて大人の目線より高い場所に置き、使ったらその場でしまう流れを家族で共有します。
洗剤や柔軟剤などのボトルも、洗濯機の横や床に直置きするのではなく、扉付きの棚やロックのかかる収納を用意すると、子どもが触れにくくなります。カラフルなジェルボール型洗剤は、見た目がキャンディーのようで誤飲が問題になっているため、特に子どもの目に触れない場所で管理したい製品です。
もしもの時の初動を、家族でイメージしておきます。
どれだけ気をつけていても、子どもは大人の予想を超えた行動をとることがあります。大切なのは「絶対に誤飲させない」と自分を追い詰めることではなく、「起きてしまったかもしれない時に、何を優先するか」をイメージしておくことです。そうしておくと、いざという場面で慌てすぎずに動きやすくなります。
誤飲が疑われる場面としては、突然激しくむせる、よだれが多くなる、いつもと違う泣き方をする、喉を押さえるようなしぐさをするなどがあります。また、誰も見ていない一瞬のすきに静かになり、部屋を見ると小さな物が無くなっている、といった状況も起こり得ます。はっきり飲み込んだところを見ていなくても、「もしかしたら」という違和感があれば、慎重に様子を見つつ、早めに受診や相談につなげる姿勢が大切です。
吐かせようとせず、呼吸と意識を優先して確認します。
子どもが何かを飲み込んだかもしれない瞬間を見た時、大人として反射的に「吐かせた方が良いのではないか」と考えてしまうことがあります。しかし、飲み込んだ物の種類によっては、無理に吐かせることで、逆に気道に詰まったり、食道や口の中を傷つけたりする危険があります。そのため、自己判断で吐かせることは避けた方が良いとされています。
まずは子どもの表情や呼吸の様子を確認し、呼びかけに反応するかどうか、泣き声や咳が出せているかどうかを見守ります。顔色が急に青白くなる、声が出ない、激しく咳き込んで苦しそうにしている、ぐったりしているといった様子が見られたら、窒息など命に関わる状態の可能性があるため、迷わず119番に通報します。ボタン電池や鋭利な物、強い磁石、薬や化学薬品などの場合は、症状が目立たなくても、早めに医療機関に相談することが勧められています。
1歳以上では異物を押し出す方法がありますが、事前の学びが大切です。
1歳以上の子どもが激しく咳き込み、声が出ず、明らかに喉に何かが詰まっている様子の時には、背中をたたいて異物を押し出す方法や、胸のあたりを圧迫して空気の力で出す方法が知られています。ただし、力の入れ方や手を当てる位置を誤ると、別のけがにつながるおそれもあります。そのため、インターネット上の情報だけを頼りにするのではなく、自治体や消防、赤十字などが行っている救命講習や、信頼できる医療機関の資料などで、事前に学んでおくことが望ましいと言えます。
ここでは、具体的な手順を一つひとつ説明する代わりに、「呼吸と意識を確認しながら救急要請をすること」と、「普段から大人側が基礎的な救命の知識を持っておくこと」が大きな柱になると意識しておくと良いでしょう。子どもの命を守るための技術は、一度きちんと学んで練習しておくことで、いざという時の心強い支えになります。
相談先と情報源をあらかじめ決めておくと、安心につながります。
誤飲や窒息が疑われた時、「この程度で受診して良いのだろうか」「救急車を呼ぶほどなのか分からない」と迷うことは少なくありません。そんな時に備えて、地域の小児科や夜間救急窓口、自治体の子育て相談窓口、救急電話相談など、頼れる連絡先をメモして冷蔵庫や電話のそばに貼っておくと、判断に迷った時の助けになります。スマートフォンに電話番号を登録しておくだけでも、緊張した場面で番号を調べる手間が省けます。
また、ボタン電池や磁石、洗剤など、家庭にある危険物ごとの注意点を、信頼できる公的なサイトや小児科医が執筆した記事で一度目を通しておくと、自分の家では何に気をつければ良いかが見えやすくなります。一度にすべてを覚える必要はありません。休日のすきま時間に、家の一角だけでも「危険がないかどうか」を点検し、少しずつ安全な動線を増やしていくことが、子どもを守る大きな力になります。
完璧を目指さず、家族で学びながら守りを重ねていきます。
誤飲と窒息の話題は、知れば知るほど不安になるかもしれません。それでも、危険な物の種類や、見逃したくないサイン、行動の優先順位を知っておくことは、決して恐がらせるためではなく、守れる命を増やすための準備だと言えます。すべてを一度に整えるのではなく、「ボタン電池と磁石の場所を見直してみる」「薬と洗剤の置き場所を決め直す」「救急の連絡先をメモしておく」といった小さな一歩からで十分です。
子どもは大人の想像を超えるスピードで成長し、そのたびに新しい危険と好奇心が生まれます。今日できる工夫を積み重ねながら、家族で声をかけ合い、ときどき情報をアップデートしていくことが、長い目で見た時の大きな安心につながっていくでしょう。
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誤飲と窒息について学べる参考文献と外部リンク。
東京消防庁、乳幼児の誤飲と窒息への備えです。
乳幼児に起こりやすい誤飲や窒息について、起こりやすい場面や注意点、応急手当の考え方を分かりやすくまとめたページです。家庭でできる予防策や、救急要請の判断の参考になります。
東京消防庁、いのちを守る応急手当。 乳幼児の誤飲や窒息への対応を東京消防庁のページで詳しく読む。
小児科オンラインジャーナル、子どもの誤飲の基本的な考え方です。
小児科医が、誤飲が起こりやすい年齢や家庭内の危険物、受診や救急車を呼ぶ目安について解説している記事です。ボタン電池や磁石など、特に注意したい物の情報も整理されています。
小児科オンラインジャーナル、おさえておきたい子どもの誤飲の基本的な考え方。 子どもの誤飲について小児科オンラインジャーナルの記事を読む。
日本小児科医会、子どもの事故と予防の情報です。
子どもの日常生活で起こりやすいさまざまな事故と、その予防策についてまとめた情報ページです。誤飲だけでなく、転落ややけどなども含めて、家庭での安全対策を考える時の基礎資料になります。
日本小児科医会、子どもの事故に関する情報提供。 日本小児科医会の子どもの事故に関するページを読む。


