やけどと打撲から、0〜2歳の子どもを守る応急処置を、家庭のあたりまえにします。
熱い飲み物のカップが机の端に置いてあっただけで、少し目を離したすきに、子どもが手を伸ばしてひっくり返してしまうことがあります。低い棚やテーブルの角に頭をぶつけて、急に大きな泣き声が響くこともあります。0〜2歳の時期は、動きが活発になる一方で、自分では危険を避けられない時期でもあります。
そんな場面で大人が強く意識したいのは、特別な知識を全部覚えることではなく、「こうなったらこう動く」という共通の流れを家族で持っておくことです。ここでは、やけどと頭を打ったときの応急処置を中心に、0〜2歳の子どもに合わせた考え方をまとめます。
やけどをしたときは、「水で冷やす」を迷わず選びます。
小さな体のやけどは、早く熱を逃がせるかどうかで、その後の広がりや痛みが変わってきます。このページでは、やけどをした直後の動きを「水のカーテン」と捉えてみます。冷たい水の流れを一枚のカーテンのように当てて、皮膚に残った熱を外に押し出していくイメージです。
何より大切なのは、原因が何であれ、「やけどをした」と気づいた瞬間に、できるだけ早く冷やし始めることです。細かな手順を全部思い出そうとするより、「まず水道で冷やす」とだけ決めておくだけでも、迷いが減ります。
衣類の扱いと、水の温度や時間の目安を知っておきます。
熱湯や油がかかったときは、子どもを安全な場所に移動させたうえで、すぐに冷たい水道水を当てます。衣類を着ている部分にかかった場合は、流水を衣類の上から当てて熱を逃がしながら、皮膚に貼り付いていないところは、優しく脱がせていきます。布が肌にくっついている部分は無理に引っ張らず、そのままの状態で冷やし続けます。
水はできるだけ流れ続ける形で使います。洗面器にためた水にずっとつけるより、蛇口やシャワーからの流水の方が、熱を外に逃がしやすいと言われています。時間の目安は10分から20分程度です。ただし、0〜2歳の子どもは体が小さく冷えやすいため、冷やす部位を必要なところにしぼり、ぬるめの水を使うなど、全身が冷えすぎないように様子を見ながら続けます。
家に十分な水道設備がない場面や外出先では、清潔な濡れタオルを何度も冷たい水にひたして、当て替える方法も役立ちます。大切なのは、触ってみて「まだ熱いな」と感じるあいだは、少しでも熱を逃がす工夫を続けることです。
してはいけないことと、受診の目安を家族で共有します。
やけどの部分に氷や保冷剤を直接当てると、皮膚の血の巡りが悪くなり、かえって傷みが強くなったり、深く傷ついてしまったりするおそれがあります。冷やしたい気持ちから強い冷たさを選びたくなりますが、氷は直接当てず、水道水などのやわらかい冷たさを使います。
すぐに何か塗りたくなっても、市販の軟膏やクリーム、油分の多いものを自己判断で塗るのは控えます。薬が表面を覆うと、医師がやけどの深さや状態を見きわめにくくなることがあります。水ぶくれができていても、自分でつぶしたり、皮をはがしたりしないように気をつけます。
0〜2歳の子どもの場合は、やけどの範囲が広くなくても、早めの受診を考えた方が安心です。特に、顔や首、関節の周り、陰部など、将来の動きや見た目に影響が出やすい場所のやけどは、必ず医師に見せます。子どもの手のひらおよそ1枚分より広いやけど、白っぽくなっている部分があるやけど、強い痛みで機嫌が落ち着かないやけども、救急外来や小児科に相談する目安になります。
頭や体を打ったときは、「いつもと違う様子」を探します。
低い段差につまずいて転んだり、テーブルの角に頭をぶつけたりするのは、よくある日常の一場面です。0〜2歳の子どもは頭が体に比べて重く、転んだときに頭から落ちやすいと言われています。そのため、ぶつけた瞬間の見た目だけで安心せず、その後の変化をしばらく見守ることが大切になります。
合図として覚えやすいのは、「いつもと比べてどうか」という視点です。普段と違う泣き方をしていないか、抱っこで落ち着くか、遊び方や表情に大きなくずれがないかを、一つ一つ確認していきます。
自宅で様子を見るときの目安を持っておきます。
頭や体を打った直後に大きな声で泣き、そのうち泣き止んで、抱っこや声かけで機嫌が戻り、普段通りに手足を動かして遊べているようであれば、多くの場合は少し経過を見ながら自宅で様子を見ることができます。その日の残りの時間は、激しい遊びを控えめにして、子どもから目を離しすぎないように意識します。
眠ってしまった場合も、それだけで必ず危険というわけではありません。0〜2歳の子どもは、強い泣き方をした後に、安心するとすぐ眠ってしまうことがよくあります。ただ、寝ている間も、呼吸のリズムや顔色、肌の温かさをときどき確認します。いつもと同じ寝息か、呼びかけに反応して体を少し動かすかどうかが、一つの目安になります。
受診や119番通報を考えるサインを、家族で共有します。
次のような様子が見られる場合は、早めに医療機関に連絡したり、救急車を呼んだりすることを考えます。頭を打ったあとに何度も吐き続ける、だんだん元気がなくなっていく、呼びかけても反応が弱い、いつもと明らかに様子が違うと感じる場合は、迷わず相談します。けいれんしている、片方の手足だけ動きが悪い、顔色が土色や真っ白に見えるなども、緊急のサインになります。
頭に大きなたんこぶができている、ぶつけたところから血が止まらない、耳や鼻から透明な液体や血がにじんでいる、といった状況も同様です。特に生後数か月の赤ちゃんや、高いところから落ちた場合は、見た目がそれほどひどくなくても、早めに小児科や救急外来に相談した方が安心です。
受診するか迷うときは、地域で案内されている小児救急電話相談や、自治体の救急相談窓口などを活用します。声に出して状況を説明すると、自分の気持ちも整理され、医療者からのアドバイスも受けやすくなります。
日常の準備と心構えで、いざという時の不安を小さくします。
応急処置は、知識だけでなく、家のつくりや物の置き方にも支えられます。熱い飲み物や鍋はテーブルやキッチンの奥側に置く、ポットや電気ケトルのコードを子どもの手が届かない位置にまとめておく、といった工夫は、やけどの場面そのものを減らします。頭をぶつけやすい家具の角には柔らかいクッションをつけるなど、転んだときの衝撃を和らげる工夫も役に立ちます。
いざという時に慌てすぎないために、家庭用の救急セットを一か所にまとめておくこともおすすめです。清潔なガーゼや包帯、絆創膏、体温計、連絡先を書いたメモなどを、いつも同じ場所に置いておきます。やけどや打撲のときに使うものを一緒にしておくと、「どこに何があったかな」と探す時間を減らせます。
また、同じ家で暮らす大人どうしや、近くに住む祖父母とも、「やけどをしたらまず水で冷やす」「頭をぶつけたら、様子がいつもと違うかを一緒に確認する」といった共通のイメージを、日頃から少しずつ共有しておきます。完璧な手順を暗記する必要はありません。家族が同じ方向を向いて動けるだけでも、子どもにとっては大きな安心になります。
どれだけ準備をしていても、実際にやけどや打撲が起こると、不安や後悔の気持ちが押し寄せることがあります。それでも、今回学んだような基本の流れを少しずつ自分の言葉で思い出していくことで、「あのとき、できることはやった」と振り返れる場面が増えていきます。その積み重ねが、子どもと暮らす毎日の心強さにつながっていくと言えます。
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参考文献。
こどもの救急ガイドブックによる、症状別の家庭での対処と受診の目安。
宮城県が作成したガイドブックでは、やけどや頭を打ったときなど、子どもの症状ごとに家庭での対応と医療機関を受診する目安が整理されています。図やイラストも多く、保護者が状況を判断するときの手がかりになります。
宮城県 こどもの救急ガイドブック。 宮城県公式ウェブサイト こどもの救急ガイドブック
日本赤十字社による、やけどを含む応急手当の基本と注意点。
日本赤十字社のページでは、やけどを含むさまざまなけがへの応急手当の考え方が紹介されています。流水での冷却時間や、軟膏を塗らないことなど、基本的な注意点を確認するのに役立ちます。
日本赤十字社 救急法基礎講習 種類別の手当。 日本赤十字社 応急手当のしかた
大学の安全マニュアルにまとめられた、やけど時の衣類の扱いと冷却方法。
大学の安全衛生委員会がまとめた教材では、やけどをした部位の衣類を無理に剥がさずに冷却する場面など、一般的な応急処置の考え方が解説されています。家庭での対応にも共通する考え方を確認できます。
東京工業大学 安全衛生委員会 救急処置に関する資料。 東京工業大学 安全の手引き 救急処置の基礎


