小学校英語は「使う教科」へ。家庭と学校がつながる新しい学び
英語が教科化して見えた変化
活動中心から、学びの芯を持つ授業へ
2020年に小学校5年生と6年生の英語が正式な教科になり、3年生と4年生でも年間35時間の英語活動が位置付けられました。あいさつや自己紹介に加えて、相手に伝えようとする姿勢が評価の一部になります。授業時間が確保されたことで、教材や発問の工夫が進み、物語や文化紹介など、子どもが英語に自然と近づく仕掛けが増えました。
「伝える英語」という視点が軸になります
ここでは英語の学びを「伝える英語」と呼びます。相手に届く言い方を選び、簡潔に表現する力のことです。単語を覚えるだけでなく、相手の反応を見ながら言い換える経験を重ねると、学びは実感に変わります。家庭では短い表現を生活に差し込み、学校では話す場面を用意する、この往復が定着を支えます。
タブレットが開く新しい練習のかたち
一人一台だから、すぐ録って、すぐ聴けます
全国の小学校で一人一台の端末が整備され、英語でも活用が広がっています。自分の声を録音してイントネーションを確かめたり、音声認識のアプリで発音の違いを色やスコアで見える化したりできます。自分の弱点を自分で見つける流れができると、繰り返し練習が苦になりません。
映像と音で「聞く・話す」を底上げします
会話シミュレーションでは、画面の相手とやり取りしながら表情や動きを手がかりに意味をつかみます。先生は送られてくる音声や学習履歴からつまずきを素早く把握でき、個別に声をかけやすくなりました。学びの手応えが数字や波形で見えると、子どもは自分から次の練習に向かいます。
英語がもっと楽しくなる、学校の工夫
やり取りの量を増やす会話型の授業
ALTとの自然なやり取りが、自信につながります
ALTは外国語指導を担当する先生のことです。英語でのあいさつや質問から授業が始まると、耳と目から入る情報を組み合わせて意味を推測する力が育ちます。はっきり伝わらなくても、表情や身ぶりが補ってくれる安心感が、もう一度言い直す勇気を支えます。
短いペアトークで語彙が広がります
好きな遊びや週末の予定を2人で話す課題は、小さな成功の積み重ねになります。同じ表現でも相手や場面が変わると使い方が変わるため、言い換えの力が伸びます。回数を重ねるたびに、聞く姿勢も整っていきます。
フォニックスで音と文字を結びます
発音と読み書きの共通土台を作ります
フォニックスは、アルファベットの形と音の結び付きを学ぶ方法です。口の形や舌の位置を意識しながら練習すると、カタカナに近い発音の癖が弱まり、自然な音に近づきます。音のまとまりで記憶するので、知らない単語でも推測して読めるようになります。
低学年から段階的に積み上げます
1年生で文字の形と音に親しみ、2年生以降にルールを少しずつ広げます。授業や家庭で同じ音をくり返し使うと、音と文字の対応が無理なく身に付きます。読める単語が増えると、子どもは自分から本を開くようになります。
教科の学びと英語を一緒に進める授業
理科の活動を英語でやってみます
シャボン玉の大きさを比べる、植物の観察記録をつけるなど、身近な理科を英語で行うと、言葉が目的に結びつきます。実験の手順を英語で確かめ、結果を短く発表する流れは、聞く、話す、読む、書くの力を同時に鍛えます。
図工でも英語で表現の幅を広げます
作品の説明を英語で伝えたり、作り方を聞いて作業したりする経験は、表現語彙の引き出しを増やします。動きのある授業の中で使う英語は、記憶に残りやすいのが利点です。
体を動かす英語遊びで、意味が定着します
TPRのゲームで、聞いたらすぐ動きます
TPRは、英語の指示と体の動きを結びつける学び方です。Stand up や Turn around など、言葉と動作を同時に体験すると、訳さなくても意味がわかるようになります。体が先に反応する心地よさが、集中を長く保ちます。
楽しさが記憶を長持ちさせます
Simon says のようなゲームは、聞き分けと判断を一緒に練習できます。勝ち負けが入ると気持ちが動き、言葉が印象として残ります。短い時間で切り上げるリズムが、次の授業の意欲を高めます。
二人の先生で支える、わかる授業
日本語と英語の役割をはっきり分けます
授業の見通しは日本語で伝え、見本は英語で示す流れが基本です。内容を理解してから英語に触れるため、不安なくチャレンジできます。終わったあとに二人で記録を共有し、次の授業に生かします。
自然な表現と学級理解の両輪で進めます
ALTは自然な言い回しを、担任は子どもの様子をもとに調整を担います。役割が見えると、授業が安定し、子どもは安心して発話の量を増やせます。
端末を使った学びで、練習が自走します
発音や語順を、自分の端末で確かめます
話した内容が文字で表示され、正しく言えた部分が色で示されるアプリは、振り返りに向いています。録音データは先生にも届くため、個別の助言がしやすくなります。学びの流れが可視化されると、家庭でも同じ手順で練習できます。
世界とつながる経験が、意欲を育てます
海外の学校と短い交流を行う取り組みも増えています。授業で練習した表現を使って通じた瞬間の喜びは、次の学びの原動力になります。英語が自分ごとになる体験です。
生活に近い課題で、使える英語に変えます
自分のことを英語でまとめて伝えます
5年生では、1週間の予定や好きなものをポスターにまとめ、発表する授業があります。準備の過程で語彙や表現が自然に増え、友だちの作品から言い方を学ぶ機会も生まれます。短く要点を伝える練習は、国語の力にもつながります。
読み書きを中学校の学びへつなげます
6年生では、短い物語を読み、感想を英語で書いたり話したりします。音声や絵の補助を使うと、英語が苦手でも安心して取り組めます。書いたものを声に出すと、発音と語順の確認にもなります。
学校と家庭の二本柱で、学びが続きます
毎日の工夫が、大きな差になります
寝る前の一冊が、耳を育てます
英語の絵本を1分だけ読むだけでも効果があります。先に日本語で内容を共有し、次に英語だけで読んで音に集中する流れにすると、理解と音の両方が残ります。短く続けることが一番の近道です。
移動時間も、さりげない英語の時間にします
車内で短い歌やストーリーを流すと、気負わず英語に触れられます。保護者が楽しそうに口ずさむ姿は、子どもにとって最高のモデルです。
学校との連携で、家庭学習が具体になります
授業で出た表現を、家でも使います
連絡帳にある英語フレーズを、食事や片付けの場面で使うだけで、言葉が生活に根づきます。Thank you を食卓で交わす習慣は、英語と感謝の気持ちを一緒に育てます。短い表現ほど続きます。
保護者会や公開授業で、やり方を共有します
アプリの使い方や発音のコツを知ると、家でも同じ練習ができます。学校と家庭で方法がそろうと、子どもは迷わず取り組めます。質問は早めに相談すると、先生のサポートも具体になります。
最後に、小さな指針をひとつ
比べるより、積み重ねます
昨日より一歩、を見つけます
英語の上達は個人差が大きいものです。点数や長文の量だけで判断せず、昨日より言えた言葉が増えたか、伝えたい気持ちが強くなったかを見取りましょう。学校と家庭の二本柱で進めると、英語はきっと子どもの日常に根づきます。余白を残しながら、今日の一歩から始めていきます。
参考文献
文部科学省 2017年改訂の小学校学習指導要領に関する資料で、外国語と外国語活動の目標や学年配当の確認に役立ちます。
3年生と4年生の年間時数、5年生と6年生の教科化の位置付けを確認できます。
文部科学省 義務教育段階における一人一台端末の整備状況に関する最新情報を掲載しています。
端末整備の到達状況と活用の方向性を把握できます。
文部科学省 学習指導要領の移行措置や指導上の留意点をまとめた資料です。
単元構成や評価の観点の整理に有用な基礎資料です。
