入浴から眠りまでの同じ流れが、0〜2歳の安心した夜をつくります。
夕方になると、家の中の空気が少しずつ変わっていきます。お風呂のお湯をはる音がして、パジャマを用意して、明かりが少し落ち着いた色に変わると、赤ちゃんや幼い子どもは「そろそろ一日の終わりかな」となんとなく感じ始めます。この雰囲気そのものが、眠りへの準備になっていきます。
ここでは、0〜2歳ごろの子どもに向けて、入浴から就寝までの流れを毎晩ほぼ同じ順番で続けていく方法を整理します。この流れを、ここでは「夜の安心ルーティン」と呼びます。夜の安心ルーティンとは、入浴や水分補給や歯みがきや読み聞かせなどを、落ち着いたテンポで同じ並び順に行うことで、「これが終わると眠る時間だ」と子どもが自然に見通しを持てるようにする工夫です。
夜の安心ルーティンを決めて、短く落ち着いた流れを毎晩つなげます。
夜の安心ルーティンは、特別なことをたくさんする必要はありません。むしろ、大人にとっても無理のない、短くて続けやすい流れが向いています。例えば入浴を済ませて体を拭き、パジャマに着替え、水分を少しとって歯をみがき、照明を弱くしてから絵本を読む、最後に短い子守歌や「おやすみ」のあいさつをして布団に横になる、というようなイメージです。
大切なのは、内容そのものよりも「ほぼ同じ順番で、ほぼ同じ雰囲気で続いていくこと」です。赤ちゃんや幼児は、言葉で説明されるよりも、繰り返しの体験から学びやすいです。毎晩似た流れをたどるうちに、「お風呂のあとにパジャマ」「絵本のあとに寝る時間」というように、自然に体と心が眠りに備えやすくなっていきます。
入浴は一日のスイッチを切り替える合図として活用します。
入浴は、体の汚れを落とすだけでなく、「今日がおしまいに近づいている」と伝える強い合図になります。お風呂の時間帯は、家族の生活リズムに合わせて構いませんが、就寝のすぐ直前ではなく、少し前のタイミングにしておくと、湯冷めを気にせず布団に入ることができます。
お風呂の中では、激しくはしゃぎすぎず、簡単な声かけや歌で穏やかな時間にしていくと、その後の流れがスムーズになります。長時間の入浴は体温が上がりすぎてしまうことがあるため、短めに切り上げて、タオルで包みながら「今日もがんばったね」と声をかけるような、静かな終わり方を意識すると良いでしょう。
うとうとしたところで、自分の寝床で眠りに入る経験を増やします。
絵本や子守歌でまぶたが重くなってきたら、完全に寝てしまう前に、布団やベビーベッドにそっと横になれるようにします。少し眠そうだけれど、まだ周りの気配を感じているくらいの状態で、自分の寝床で眠りに落ちる経験を積み重ねていくと、夜中に目が覚めたときにも落ち着いて再び眠りやすくなると考えられています。
これは、急に一人で寝かせる練習をしましょうという意味ではありません。ぐずったときには抱っこやとんとんももちろん力になります。そのうえで、抱っこで完全に眠らせてから別の場所にそっと置くという形だけに偏らないように、少しずつ「眠くなってきたら自分の寝床に入る」というパターンを増やしていくイメージです。
夜中に目が覚めたときも、同じ環境が続いていると安心しやすくなります。
夜の途中で目を覚ますことは、0〜2歳の子どもにはとてもよくあります。大人でも寝返りを打ったり、ふと目を開けたりすることがあるように、睡眠はずっと同じ深さではなく、浅くなったり深くなったりをくり返しています。
そのとき、寝かしつけのときと夜中の対応の雰囲気に大きな差があると、子どもは戸惑いやすくなります。例えば寝かしつけでは暗く静かな部屋でそばに座っていたのに、夜中に起きたときだけ明るいリビングに連れて行く、といった違いが続くと、「起きると遊べるかもしれない」という期待がふくらみ、目覚めが長引きやすくなります。
夜中に目が覚めたときこそ、明かりは弱いままにして、声も小さめに抑えます。「ここは安心して眠る場所だよ」というメッセージが伝わるように、寝かしつけの延長線上の対応を心がけると、少しずつ再入眠のリズムが安定しやすくなります。
0〜2歳それぞれの発達に合わせて、ルーティンの形を変えていきます。
生後数か月のあいだは、授乳やミルクの間隔もまだ一定になりにくく、夜のリズムも不安定です。この時期は、厳密な時間管理よりも、「入浴をしたら薄暗い場所で過ごす」「寝る前には大きな音を減らす」といった、ゆるやかな型を作るイメージで十分です。
生後6か月を過ぎてくると、昼と夜の区別が少しずつはっきりし、夜にまとまって眠る時間がのびていきます。この頃から、入浴とパジャマと読み聞かせといった流れを意識して整えると、「この順番が終わると眠る」という見通しを持ちやすくなります。
1歳を過ぎると、自分で動き回る範囲が広がり、一日の興奮も増えていきます。ルーティンの中に、今日あった楽しかった出来事を短く振り返る時間を入れると、心が落ち着きやすくなることがあります。2歳に近づくと「自分でやりたい」という気持ちが強くなり、パジャマを選んだり、読む絵本を選んだりする場面を組み込むと、寝る前の時間にも子どもの主体性が生かせます。
寝床の安全を最優先にして、静かで暗めの環境を保ちます。
0〜2歳の睡眠環境では、「よく眠れること」と同じくらい「安全であること」が重要です。寝床にはやわらかい枕や大きなクッションやぬいぐるみを入れず、赤ちゃんや幼児の顔まわりをふさがないようにします。敷き布団やマットレスは、体が沈み込まない程度のしっかりしたものを選び、仰向けで寝かせることが推奨されています。
室温は、大人が薄手の長袖で過ごして少し快適に感じるくらいを目安にすると、多くの家庭でちょうど良いと言われています。厚着を重ねて汗びっしょりになるより、薄手のパジャマとスリーパーなどで重ね方を調整した方が、暑くなりすぎるリスクを減らせます。エアコンや暖房を使う場合も、直接風が子どもに当たらないようにしながら、温度と湿度を整えていきます。
明かりは、絵本を読む時間は目をこらさなくて済む程度に、その後は足元が見えるかどうかくらいの弱い照明にしておくと、眠気が高まりやすくなります。完全な真っ暗が不安な場合は、小さな常夜灯を使うなど、家族にとってのちょうど良い暗さを探していきます。
歯みがきや水分補給も、夜の流れの中に組み込みます。
歯が生え始めた時期からは、寝る前の歯みがきを、ルーティンの中の定位置として扱っていきます。例えば「お風呂のあとに歯みがき」「絵本の前に歯みがき」のように順番を決めてしまうと、大人も子どもも忘れにくくなります。寝る直前の多めの飲み物は、おなかが苦しくなったり、夜中のおむつ替えが増えたりすることもあるため、夕食から寝るまでの間で、こまめに水分をとっておくと安心です。
短い決まり文句を、毎晩の締めくくりの合図にします。
布団に入るときの短い一言も、心強い合図になります。「おやすみ、また明日遊ぼうね」「ここは安心して眠る場所だよ」のような、家族にとって自然な言葉を選びます。毎晩ほぼ同じ言葉をそっとかけることで、そのフレーズそのものが「もう体を休めていい時間だ」というサインになっていきます。
子どもが成長するにつれて、その言葉に小さなやりとりが加わることもあります。「今日の楽しかったことを1つ話してから寝ようか」というように、その日の終わりを一緒に振り返る時間として育てていくこともできます。
完璧なルーティンを目指すより、「だいたい同じ」を続けていきます。
大人の予定やきょうだいの行事や体調不良などで、毎晩まったく同じ時刻や内容を守ることは、現実的にはとても難しいです。ときには帰宅が遅くなったり、機嫌が悪くていつもの絵本どころではなかったりする日もあるでしょう。
そんな日があっても、「ひとまずお風呂とパジャマだけは済ませる」「いつもの子守歌だけは小さな声で歌ってから寝る」というように、流れの中の小さな柱を1つでも残しておくと、子どもにとっては「いつもとつながっている感覚」を保ちやすくなります。完璧さよりも、「だいたい同じ雰囲気の夜が続いている」という安心感が、長い目で見ると睡眠リズムの土台になっていきます。
小さな習慣の積み重ねが、家族全員の夜を少しずつ楽にしていきます。
入浴と就寝前の流れを同じ順番で続けることは、子どものためだけでなく、大人の心の準備にもつながります。「この順番をたどれば、今日の育児はひと区切り」という目印になることで、保護者の気持ちも少しずつ落ち着きやすくなります。
0〜2歳のあいだは、生活が月ごとに変化し続けます。そのなかで、一度決めたルーティンを変えてはいけないわけではありません。子どもの成長や家族の状況に合わせて、入浴の時間帯や絵本の内容や寝る前の声かけを、何度変えても良いのです。大切なのは、その時々の暮らしに合った形で、「夜はこんなふうに終わっていく」という筋道を、子どもと一緒に少しずつ育てていくことです。
今日からできそうなことを、1つだけ選んで試してみるところから始めてみてください。短い子守歌を決めてみることでも、寝室の明かりを少しだけ落としてみることでも構いません。小さな変化の積み重ねが、やがて「夜になると自然と眠りに向かえる」という感覚につながっていきます。
おすすめ睡眠グッズはこちらPR
関連記事
参考文献。
乳幼児の睡眠と就寝前の習慣に関する情報源。
イギリスの公的医療サービスが提供する、赤ちゃんから幼児期までの睡眠に関する解説ページです。就寝前に明るさを落とし、落ち着いた行動を短時間続ける「寝る前のルーティン」を勧めており、家庭で実践しやすい工夫が具体的に紹介されています。
National Health Service. Sleep and young children.
幼児の健康的な睡眠習慣とルーティンづくりについて。
イギリスの小児医療サービスがまとめた、幼児の睡眠ルーティンに関するガイドです。就寝前に気持ちを静める行動をまとめて行うことや、毎晩似た順番で進めることの重要性が説明されています。
Cambridgeshire and Peterborough Children and Young People's Health Services. Sleep routines for toddlers and children.
安全な寝床と環境づくりに関する安全指針。
カナダの公衆衛生当局の推奨をまとめた安全な睡眠環境のガイドです。しっかりした寝具の上で仰向けに寝かせることや、寝床にやわらかい物を置かないこと、室温の管理など、安全な環境づくりの基本的な考え方が整理されています。
Public Health Sudbury and Districts. Safe sleep for baby.






