赤ちゃんの発達の目安、全体の流れをやさしくつかむ
生後の赤ちゃんを見ていると、昨日までできなかったことが突然できるようになって驚くことがあります。視線が合うようになったり、声をかけると表情が変わったり、気がつくと部屋の中をつたい歩きしていたりします。こうした変化を落ち着いて受け止めるために、月齢ごとの発達の目安を知っておくことは大切です。ただし、目安は一人ひとりの成長を縛る線ではなく、広がりのあるめやすの帯としてとらえた方が、親子にとっては楽になります。
ここでは、赤ちゃんの発達の流れをあえて「発達の地図」と呼びます。発達の地図とは、月齢ごとにどんな変化が起こりやすいかを、だいたいの順番と広がりを持った案内図として見る考え方です。地図があれば道に迷いにくくなりますが、すべての人が同じペースで歩くわけではないように、発達にもゆっくり目の子もいれば、ある時期だけぐっと進む子もいます。
月齢ごとの変化、からだと心の大きな流れを知る
生後前半の数か月は、まず「周りの世界に気づくこと」が中心に育ちます。視線が合いやすくなり、音に振り向き、人の声に反応して表情が変わります。首がしっかりしてくると、抱っこのしかたや目線の高さも変わり、赤ちゃんの見ている世界が一段広がります。まだ大きな動きは少ない時期ですが、体の中では姿勢を支える力や、音や光に慣れていく力が少しずつ整っています。
生後後半になると、からだの動きが目に見えて変わってきます。寝返りがうてるようになる子が増え、おすわりで周りを見渡したり、手を伸ばして物をつかんだりします。やがてつかまり立ちをして、家具につかまりながら横に移動するつたい歩きが見られるようになり、早い子では誕生日の頃からそれ以降に、ひとりで歩くこともあります。動ける範囲が広がることで、好奇心の方向も一気に広がり、手の届く世界と危険も増える時期です。
ことばの育ちは、音まねよりも前に「気持ちを伝える仕草」から始まります。欲しい物に手を伸ばしたり、指さしで知らせたり、特定の人に向けて笑顔を向けたりすることは、すでにコミュニケーションの入り口です。そのうち「まんま」「ブーブー」のような意味のある音が少しずつ混ざり、家族が毎日のやりとりの中で言葉を返していくことで、ゆっくりと語彙が増えていきます。
発達の地図、平均ではなく広がりを見る考え方
発達の本や母子健康手帳には、首すわりや寝返り、ひとりすわり、はいはい、つかまり立ち、ひとり歩きなどの月齢の目安が示されています。これらは、特定の月齢の子どもの多くができるようになる時期を調査して作られたものです。たとえば、ある動きができる子がぐっと増えてくる時期から、ほとんどの子ができるようになる時期までをひとつの帯のように示しており、その中に多くの子どもが含まれるという考え方になっています。
つまり、発達の目安は「平均の理想像」ではなく、「多くの子が到達する範囲の目安」です。数字だけを見て、数か月早い遅いを気にしすぎると、かえって親子ともに疲れてしまいます。同じ月齢でも、体の発達が先に進む子もいれば、ことばや表情の豊かさが際立つ子もいます。学年が違う子ども同士を比べないように、月齢の比較も控えめにした方が、お子さんの持っている良さに気づきやすくなります。
目安表を眺めるときは、「今はこのあたりを歩いているのかもしれない」と、ざっくりした位置を確認するくらいで十分です。もし、複数の動きや反応が長い期間ほとんど変わらないように感じるときや、本人が動きにくそうでつらそうにしているときには、かかりつけ医や地域の相談窓口に様子を伝えると安心につながります。
からだの発達、動きのステップをていねいに見ていく
生後前半、からだを支える力が育つ
生後数か月の頃は、まず首がしっかりしてくることが大きな節目です。首すわりは、抱き上げたときに頭がぐらぐらせず、ある程度自分で支えられる状態を指します。うつ伏せにすると短い時間だけ頭を持ち上げられるようになり、顔を左右に向けられるようになると、周りの様子を自分の力で確認できるようになります。
この時期には、手足をばたばた動かしたり、手を口に持っていったりといった、いわば準備運動のような動きが増えます。大人の目から見ると小さな変化ですが、筋肉や関節が少しずつ協力し始める大事なステップです。まだ寝返りをしない月齢でも、うつ伏せの姿勢を短時間練習したり、あお向けで自由に手足を動かせる時間を確保したりすることが、次の動きにつながっていきます。
生後後半、移動する力で世界が広がる
生後後半の頃になると、寝返りで行きたい方向に体を向けたり、おすわりで両手を前についてバランスをとったりできる子が増えます。はいはいができるようになると、気になる物に自分から近づけるようになり、周囲の環境を試すような行動も増えます。はいはいの形も、ずりばいやお尻をずらして進む動きなど、いくつかのスタイルがあります。
家具につかまって立ち上がるようになると、足の裏で床を感じる機会が増えます。つたい歩きは、ひざや股関節、足首にかかる負担が変化するため、最初は不安定に見えるかもしれません。ここで大事なのは、「立った順番」ではなく、「本人がどれだけ安心して挑戦できる環境か」です。床に段差が少ないか、つかまる場所は安定しているかなど、周囲の安全を整えることで、運動の練習を支えることができます。
ひとり歩きが始まる時期には幅があり、同じ年の子どもでも、まだつたい歩き中心の子もいれば、外でよちよち歩きを楽しむ子もいます。どのスタートであっても、転びながら少しずつ歩き方を身につけていくという過程そのものが、発達の大事な経験になっています。
ことばと気持ちの育ち、サインを読み取る関わり方
身振りや指さし、ことばの土台になるやりとり
ことばの発達は、音が出るより前から始まっています。大人の顔をじっと見たり、呼びかけに微笑みで応えたりすることも、すでに「気持ちを伝えるやりとり」です。少し大きくなると、気になる物を見てから大人の顔を振り返る「共同注視」と呼ばれる行動が増えます。これは、「あれを見て」「一緒に見よう」という招待のサインでもあります。
指さしやバイバイの身振りは、ことばの前段階としてとても重要です。自分の思いを指先や手の動きにのせることで、「伝わった」という経験を積み重ねます。この時期に、指さした先を大人が見て反応を返してあげることは、それ自体が子どもの語りかけに応えることになり、のちの言葉の増え方にも良い影響を与えると言われています。
意味のあることば、日常のくり返しから増えていく
「まんま」「わんわん」といった意味のある音が聞かれるようになると、いよいよことばらしさを感じやすくなります。最初は、家族がよく使う言葉や、本人にとって印象に残る物の名前が中心です。短い言葉がいくつか聞かれるようになっても、その数やスピードは子どもによって大きく違います。大人が一方的に教え込むというより、日常生活の中で自然にくり返される言葉が、少しずつ体になじんでいくイメージに近いかもしれません。
ここで視点を少し変えて、子どもの側から世界を見てみると、毎日は新しい音と光と匂いであふれています。誰かが笑っている声、食器が触れ合う音、外から聞こえる車の走行音など、すべてが混ざり合う中で、「この音はごはん」「この声は家族」というように、少しずつ意味が分かれていきます。大人がゆっくり話しかけたり、子どもの発した音に笑顔で応じたりすることは、こうした整理を手伝うことでもあります。
発達への心配、どこまでを様子見にしてどこから相談するか
気になるサイン、長く続くときは相談を考える
発達の目安には幅があるため、単に周囲より少し遅いからといって、すぐに問題とは限りません。それでも、いくつかのポイントは意識しておくと安心です。たとえば、名前を呼んでもほとんど振り向かない、視線がほとんど合わない、表情の変化が極端に少ないといった様子が、月齢にかかわらず長い期間続くときには、早めに相談した方がよい場合があります。
また、動きに関しても、片側の手ばかり使っている、寝返りやおすわりのときにいつも同じ側に傾くなど、左右差が極端に目立つ場合には、専門家の目で確認してもらうと安心です。気になることを書き留めたり、動画に撮っておいたりすると、乳幼児健診や小児科受診の際に状況を伝えやすくなります。
相談先、ひとりで抱え込まないための選択肢
発達について不安を感じたときに頼れる場所はひとつではありません。地域の保健センターや子育て支援センター、自治体の相談窓口は、育児全般の相談に応じてくれます。定期の乳幼児健診や予防接種のタイミングで、小児科医や保健師に日頃の気がかりを伝えるのも良い方法です。
相談の場では、「何ができていないか」だけでなく、「どんな表情をするときにうれしそうか」「好きな遊びは何か」といった、その子ならではの様子も一緒に伝えると、発達の全体像がつかみやすくなります。専門家と親がそれぞれの視点を持ち寄ることで、その子に合ったペースや関わり方を一緒に考えやすくなります。
親のまなざし、見守りと気づきのあいだでできること
発達の地図を知ることは、子どもの未来を予測するためというより、今をていねいに味わうための手がかりです。視線が合うようになった日、初めて寝返りに成功した瞬間、つたい歩きで不安そうにこちらを振り返った表情などは、その時期にしか見られない姿です。目安を確認しつつも、カレンダーに「何ができたか」だけでなく、「そのときどんな顔をしていたか」を書き残していくと、後から振り返ったときに親子の物語として思い出せます。
一方で、心配が膨らみすぎてしまうと、毎日のささいな変化を楽しむ余裕がなくなります。そんなときは、「今週の様子だけを見てみよう」と期間を区切って観察したり、「きょうは表情だけ」「きょうは手の動きだけ」と焦点を絞って眺めたりする方法も役に立ちます。発達の目安は、子どもを評価する物差しではなく、親が安心して見守るための道具として使えると、心持ちは少し軽くなります。
月齢ごとの発達は線ではなく、太さのある帯のように広がっています。帯の中でゆっくり進む子もいれば、あるところから急に追いつく子もいます。成長のリズムを一緒に探しながら、気になるところは早めに周囲の力も借りていく。そのくらいの距離感で向き合うことが、赤ちゃんと大人の両方にとって、無理のない歩き方と言えるかもしれません。
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