毎日の会話と遊びで、語彙と理解をじわっと伸ばすコツ。
結論はシンプルです。語彙は、特別な教材より、毎日のやり取りで増えやすいと言えます。読み聞かせや散歩の語りかけ、遊びの中の短い会話を重ねるだけで、子どもは言葉を拾い、意味をつなぎ、少しずつ自分の言い方を作っていきます。
小学校受験や中学校受験を考えていると、早く整えたくなる気持ちが出てきます。それでも、ここで急ぐより、家庭の空気が柔らかいまま続く関わり方を選ぶほうが、結果として伸びが出やすいでしょう。
言葉は、勉強より前に、生活の中で育ちます。
語彙は、知らない言葉を覚えることだけではありません。知っている言葉を、場面に合わせて使い分ける力も含みます。たとえば「大きい」だけでなく、「高い」「長い」「深い」のように、同じ感覚を少しずつ細かく分けていく感じです。
この力は、机に向かう時間だけで作られません。食卓でのひと言、靴を履くときの声かけ、遊びのルール説明など、生活の中の短い言葉が積み重なって土台になります。
鍵は、言葉の往復が増えることです。
ここで覚えておきたい合言葉があります。言葉の往復です。子どもの発言やしぐさに対して、大人がすぐ返し、子どもがまた返す。たった数秒のやり取りでも、回数が増えるほど、言葉の理解と使用が整いやすくなります。
よくある誤解は、長く話せば伸びるという考え方です。長い説明は、子どもにとって音が流れていくだけになることがあります。短い言葉を投げて、反応を待ち、また返す。その繰り返しのほうが、会話の形が残りやすいでしょう。
散歩の実況が、語彙の引き出しを増やします。
散歩は、語彙が増えやすい時間です。目の前の世界が次々に変わり、言葉の材料がたくさん落ちています。子どもが指をさしたら、その対象に短く名前をつけます。「赤い車だね。ピカピカしているね。」のように、色や状態を足すと、言葉が広がります。
実況のコツは、答え合わせを急がないことです。「あれなに。」と聞かれたら、正解を言うだけで終わらせず、「大きい木だね。葉っぱがゆれているね。」と観察の言葉を添えます。知らない言葉に触れる前に、見えたことを言葉にする練習が入ります。
子どもの言葉を、少しだけ伸ばして返します。
子どもが言った言葉を、少しだけ長い文にして返す方法があります。拡張(子どもの言い方を大人が少し伸ばす関わり)と呼ばれることもあります。たとえば子どもが「ワンワン。」と言ったら、「ワンワンが走っているね。」と返します。
ここで大事なのは、直しすぎないことです。間違い探しになると、話す気持ちがしぼみます。子どもの言葉を受け取って、自然な形に整えて返す。これだけで、文の形が耳に残ります。
選べた経験が、話したくなる土台になります。
会話が増える家庭には、共通点があります。子どもが選べる場面があることです。選択肢を出すと、子どもは言葉で答えやすくなります。「公園で滑り台とブランコ、どっちにする。」のように、選べる幅を小さくしてあげるのがコツです。
選べた回数が増えると、自己効力感(自分でできたという感覚)が育ちます。この感覚がある子どもは、質問を返したり、話題を出したりすることが増えやすいと言えます。会話のキャッチボールが続く家庭の空気は、実はここで作られていることが多いです。
遊びは、理解の練習場になります。
語彙が増えるだけでは、会話は続きません。相手の言葉を受け取り、状況を想像し、順番を守る。こうした理解の力もいっしょに伸びていきます。遊びは、その練習が自然に入る場所です。
ごっこ遊びで、出来事の順番が言葉になります。
ごっこ遊びは、出来事の順番を作ります。お店屋さん、病院、電車ごっこなど、始まりがあって、途中があって、終わりがあります。子どもが遊びを説明しようとするとき、「最初にこれをして、そのあとこうして、最後にこうした。」という流れが言葉になります。
大人は、細かく演出しなくて大丈夫です。子どもが言った設定をそのまま受け、短い質問を挟むと、言葉が増えます。「次はどうする。」と聞くだけで、子どもは先を考えて話し始めます。
ルールがある遊びで、聞く力が整います。
すごろくや簡単なカード遊びのように、順番が決まっている遊びは、聞く力を育てます。自分の番まで待つこと、相手の言葉を聞いてから動くことが、遊びの中で必要になるからです。
ここでも、勝ち負けを強くしないほうが続きます。勝ち負けより、「今のはよく見ていたね。」のように過程を言葉にして返すと、子どもは次の手を説明しやすくなります。
読み聞かせは、語彙と安心を同時に育てます。
読み聞かせは、語彙の貯金になります。家庭では出にくい言い回しに触れられますし、同じ本を繰り返すことで、言葉が定着しやすくなります。
ページを進める速さは、気にしなくて大丈夫です。途中で止まって、「この子はどんな気持ちかな。」と話すだけで、理解が深まります。絵を見ながら、子どもの言葉を待つ時間が入るからです。
絵本や童話などを読み聞かせてもらい、イメージを広げる。
公的な資料でも、読み聞かせが想像を広げる関わりとして示されています。難しいことを足さず、同じ本をいっしょに楽しむだけで、言葉の土台は厚くなっていくでしょう。
受験を意識するときほど、会話を細く長く続けます。
小学校受験や中学校受験では、家庭での会話が気になる場面があります。だからこそ、会話を訓練に変えないことが大切です。言葉は、評価のために出そうとすると固くなりやすいです。
普段の会話で「どう思う。」と聞いて、子どもが言いにくそうなら、「楽しかった。びっくりした。」のように感情の言葉を先に置きます。感情は言葉にしやすく、話の入口になります。
もう少し伸ばしたいときは、答えを増やすより、理由を短く足します。「どうしてそう思った。」と聞く代わりに、「そう思ったのは、ここが好きだからかな。」のように大人が仮の理由を置くと、子どもが乗りやすくなります。
心配があるときは、見落としやすい点から確認します。
言葉には個人差があります。話すのがゆっくりでも、理解がしっかりしている子もいます。逆に、よく話していても、聞き取りが苦手な子もいます。気になるときは、話す量だけで判断しないほうが安心です。
呼びかけに反応があるか、指さしで気持ちが伝えられるか、やり取りが続くか。ここが日常で見やすい手がかりになります。心配が強いときは、小児科や言語聴覚士(話す、聞く、食べるを支える専門職)に相談する道もあります。
言葉の遅れに、聞こえの問題が関係している場合もあります。耳の病気は見た目では分かりにくいことがあるので、検査で安心できることもあります。焦らず、確認できるところから整えていくとよいでしょう。
今日からの1歩は、家の中のひと言を変えるだけで足ります。
新しい道具はいりません。いつもの生活の中で、子どもの言葉に少しだけ言葉を足して返す。それだけで、語彙と理解は動き始めます。
散歩の途中で見えたものに名前をつける日があってもいいですし、寝る前に同じ絵本を読み返す日があってもいいです。続いた日が、良い日です。続かなかった日があっても、また戻れます。
受験の準備は、家庭のペースを守りながらでも進められます。言葉の伸びは、静かな積み重ねに反応します。今日の会話が、明日のひと言を少し楽にしてくれるはずです。
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参考文献。
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厚生労働省。保育所保育指針について。言葉の項目で、読み聞かせや会話のねらいを確認できます。 絵本や童話などを読み聞かせてもらい、イメージを広げる。
資料を確認する。 -
Harvard Center on the Developing Child。大人と子どもの往復のやり取りが発達の土台になる考え方を確認できます。 Serve and return interactions play a key role in shaping brain architecture.
資料を確認する。 -
National Institute on Deafness and Other Communication Disorders。0歳から5歳までの言葉の発達の目安と、相談の考え方を確認できます。 Children vary in their development of speech and language skills.
資料を確認する。 -
World Health Organization。5歳未満の生活リズムと、座って過ごす時間の考え方を確認できます。 The maximum recommended time these children should spend on screen-based sedentary activities.
資料を確認する。 -
HealthyChildren.org。読み聞かせを早い時期から続ける意味と、親子の関係づくりとのつながりを確認できます。 Read aloud with their newborns and young children.
資料を確認する。
