公園で走って、家でブロックを組み立てて、友だちと順番を待つ。こうした遊びの積み重ねは、ただ楽しいだけで終わりません。体の使い方と手先の感覚と人との関わり方が、同時に育ちます。
小学校受験や中学校受験を考えている家庭でも、まだ迷っている家庭でも、遊びは焦りを増やさずに伸びしろを増やせる方法と言えます。特別な教材がなくても、日常の中で十分に工夫できます。
遊びは準備ではなく、育ちそのものです。
この時期の子どもは、体を動かしながら学びます。できた、できないよりも、やってみる、もう1回やってみるの反復が力になります。遊びは、努力を要求せずに集中を引き出せる場です。
大人が結果を急ぐと、子どもは遊びから距離を取りやすくなります。反対に、少し難しいけれど届きそうな挑戦があると、夢中になって工夫します。その工夫が、学びの芽になります。
全身を使う遊びで、姿勢と集中の土台が整います。
走る、跳ぶ、よける、またぐ。こうした動きは、体力だけでなく、姿勢を保つ力や転びそうなときに踏ん張る力にもつながります。静かに座る練習より先に、動ける体を育てるほうが回り道になりにくいでしょう。
平均台やケンケンやスキップのようなバランス遊びは、集中の切り替えも助けます。足元を見て、周りを見て、次の一歩を決める。小さな判断の連続が、危険を避ける感覚を育てます。
家でも外でも、動きが自然に増える仕掛けを置きます。
外遊びが難しい日でも、動く余地はつくれます。廊下をまっすぐ歩くだけでも、手を広げて落ちないように歩くとバランスが必要になります。床にテープで細い道を作って、その上だけを歩く遊びにすると、短時間でも体の軸が育ちます。
公園では、遊具をこなすことが目的になりがちです。そういう日は、遊具の順番を減らして、走る、止まる、方向を変える遊びを混ぜると、体の使い方が豊かになります。鬼ごっこでも、ただ追うより、木の周りを回る、線をまたいだら休めるなど、子どもが自分でルールを増やせると続きやすいです。
安全は、禁止よりも見通しでつくります。
危ないからやめると言われ続けると、子どもは体の使い方を学ぶ機会を失います。危ない場面を減らしつつ、やってよい範囲をはっきりさせるほうが、子どもにとっては安心です。滑りやすい床なら靴下を脱ぐ、角が多い場所なら遊ぶ範囲を狭めるなど、環境で整えるのが効果的です。
転ぶ経験を完全に消すのは難しいです。転びそうなときに手が出る、止まれる、周りを見て距離をとれる。こうした感覚は、遊びの中で育ちます。
手先の遊びで、書く切るの前の感覚が育ちます。
積み木やブロックや折り紙や粘土は、手先の器用さを自然に引き出します。ここで大切なのは、作品を完成させることより、指先でつまむ、押す、回す、そろえるといった動きが増えることです。
手先の力は、鉛筆を持つ前から準備できます。つまむ動きが増えると、箸やボタンやファスナーにもつながります。巧緻性(手先を細かく動かす力)という言葉でまとめられる領域ですが、難しく考えなくて大丈夫です。日々の手の動きが少しずつ増えていけば十分です。
手先は、速さより丁寧さで伸びます。
ブロックを高く積むとき、手が震えると崩れます。そのときに子どもは、ゆっくり置く、呼吸を止めずに置く、力を抜くという感覚を覚えます。これは書くときの力加減にも近い感覚です。
折り紙が難しいときは、きれいに折るより、角をそろえる感覚を味わうほうが先です。大人が先に仕上げるより、子どもが自分の手で形を変えた実感を持てるほうが残ります。
道具の入り口は、遊びとして触れることです。
はさみやのりは、使い方の説明が長いと集中が切れます。短い時間で終わる遊びから入ると、道具に良い印象が残ります。最初は直線を少し切るだけでも、手首と目の協力が必要になります。
鉛筆も同じです。線をきれいに引くより、短い線をたくさん描く遊びや、丸を描く遊びのほうが入りやすいです。終わりが見えると、子どもは安心して取り組めます。
ルールのある遊びが、待つ力と交渉する力を育てます。
社会性は、仲良くする技術だけではありません。待つ、譲る、言い返しすぎない、お願いの形に直す。こうした小さな調整が集まったものです。順番やルールがある遊びは、その練習になりやすいです。
ボードゲームでも、簡単なカード遊びでも、相手がいるだけで学べることが増えます。勝ち負けに敏感な子には、負けても終わりではない形を用意すると続きます。次は交代で勝ち役をやってみる、得点は数えない、終わりの拍手を大事にする。こうした調整は、子どもを甘やかすのではなく、続けるための設計です。
トラブルは、性格ではなく場面として見ると楽になります。
友だちとぶつかるとき、原因は性格よりも場面にあることが多いです。疲れている、遊具が混んでいる、ルールが曖昧、終わりが見えない。こういう条件が重なると、優しい子でも荒くなります。
ここで一度、視点を大人側に戻します。子どもにいい子でいてほしいと思うほど、トラブルは心配になります。ただ、トラブルは関係がある証拠でもあります。関係があるからこそ、交渉が必要になります。遊びの場で小さく経験できると、学校生活での困りごとも小さくなりやすいでしょう。
言い方の型を、短い言葉で渡します。
順番が守れないとき、叱るより先に、言い方の型を渡すほうが効きます。かして、あとでいい、次わたし。短い言葉で十分です。大人が代わりに言うのではなく、子どもが言える形にするのがポイントです。
泣いてしまう子には、泣き止ませるより、気持ちの名前をつけるほうが落ち着きます。悔しかった、びっくりした、もう1回やりたかった。言葉が増えると、行動の選択肢も増えます。
小学校受験や中学校受験を意識する家庭の、遊びの見方が変わります。
受験の準備という言葉は、家庭によって重く感じます。ここでは、受験を決めつけません。その上で言えるのは、遊びが育てる力は、入学後にも確実に使うということです。姿勢を保つ、話を聞いて行動に移す、困ったときに言葉で助けを求める。どれも遊びの中で伸びます。
家庭でできるのは、練習量を増やすことではなく、遊びの質を上げることです。子どもが自分で決められる余白を残すと、意欲が保たれます。大人がうまく誘導しすぎると、正解探しになってしまい、考える楽しさが薄れます。
受験をするかどうかで遊びを変える必要はありません。変えるとしたら、見守り方です。できるまで待つ、途中で口を出しすぎない、終わり方を丁寧にする。そういう部分が、子どもの自信を育てます。
続けやすい家庭の工夫は、がんばらない形にあります。
毎日続けるには、気合より仕組みです。遊び道具は増やさず、すぐ手に取れる場所に置くほうが動きます。収納の奥にしまうほど、遊びは特別になってしまいます。
時間も、長く取る必要はありません。短い時間でも、回数が増えると体は覚えます。子どもが遊びを終えるときに、もう少しやりたいで終われると、次につながります。
大人が一緒に遊べない日もあります。そういう日は、実況中継だけでも十分です。跳べたね、次はゆっくりだね。見てくれている感覚があると、子どもは安心して挑戦できます。
今日からできる小さな一歩を置いて終わります。
外で走る日が増えるだけでも、家で指先を動かす時間が少し増えるだけでも、子どもの土台は厚くなります。遊びは、子どものためであると同時に、家庭の空気を守る方法でもあります。
うまくやるより、続く形にする。そう考えると、遊びはもっと気楽になります。明日、少しだけ動けたら、それで十分です。
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参考文献。
内容の確認や、家庭での取り入れ方を深めるときに役立つ資料です。公的機関や研究機関の情報を中心に掲載します。
毎日、合計60分以上、楽しく体を動かすことが望ましい。
文部科学省「幼児期運動指針」より。
- 文部科学省 幼児期運動指針。3歳から6歳の運動と遊びの考え方と目安を確認できます。 https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/undousisin/1319771.htm
- 世界保健機関 公式ニュース。幼児の座りすぎを減らし遊びを増やす推奨の考え方を確認できます。 https://www.who.int/es/news/item/24-04-2019-to-grow-up-healthy-children-need-to-sit-less-and-play-more
- ハーバード大学系の研究拠点。会話とやり取りが脳の発達を支える考え方を確認できます。 https://developingchild.harvard.edu/science/key-concepts/serve-and-return/
- 米国疾病対策センター。年齢ごとの発達の目安を整理する際のチェックに役立ちます。 https://www.cdc.gov/ncbddd/actearly/pdf/checklists/all_checklists.pdf
- こども家庭庁 保育所保育指針。園生活で大切にされる遊びや関わりの方向性を確認できます。 https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/d55a8b58-8934-40e0-8d25-7da196b2d0a3/76a1bc90/20230331_policies_hoiku_shishin.pdf
