結論まとめ
- まず押さえたい結論
数をくらべる力は、年中や年長の時期に育てやすい大切な土台です。ただ数を唱えるだけでなく、多い・少ない・同じを見分けて、数の意味をつかむ力につながります。
- 始める前に見たいポイント
数を数えられても、どちらが多いかを言うと迷う子には特に向いています。絵を見て比べる学びは、机に向かう練習の入口としても始めやすいです。
- 気をつけたいこと
早く答えることが目的ではありません。数え間違いを責めず、見て、数えて、確かめる流れを大事にした方が、あとにつながりやすいです。
- 迷ったときの考え方
受験のためだけでなく、学校での算数や日常のやり取りにつながるかで見ると判断しやすいです。家庭で無理なく続けられる形なら、十分によい積み重ねになります。
この記事は、1人の意見だけでなく、複数の研究や公的情報、さらに多くの研究をまとめて見た情報をもとに比較・整理しています。
数をくらべる力は、受験だけでなく、その先の学びにもつながります
年中や年長の時期に「数をくらべる」問題へ取り組む意味は、単に数の問題に慣れることではありません。大切なのは、数を声に出して言えることから一歩進んで、数の大きさや差を頭の中でつかめるようになることです。
たとえば、左にいちごが6こ、右にバナナが4こある絵を見て、「左のほうが多い」と言える力は、ただ6まで数えられる力とは少し違います。数えた結果を使って、2つの集まりを見比べ、関係を言葉にする必要があるからです。
この「数えたあとに意味が残る力」を、ここでは「数のつながりが見える力」と呼びます。年中や年長は、この力を育てるのにちょうどよい時期です。数の歌や暗唱だけでは届きにくい部分に、少しずつ手が届きやすくなるからです。
小学校受験を考える家庭では、数の問題というと、つい正解やスピードに意識が向きやすいかもしれません。ただ、実際に土台になるのは、見て、数えて、比べて、言葉にする流れが自然にできることです。受験をまだ決めていない家庭でも、この土台は学校生活の中で役立ちます。
年中や年長に合っている理由は、数の理解が「言える」から「わかる」へ進む時期だからです
幼児期の前半は、1、2、3と数を言えること自体が大きな成長です。けれども年中から年長にかけては、数のことばを知っているだけでなく、その数がどれくらいの量を表しているかを結びつける力が育ちやすくなります。
たとえば、5こと7こを見たときに、「7のほうが多い」とわかることや、「7は5より2多い」と少しずつ考えられることは、数字の名前を知っているだけではできません。数の順番、量の大きさ、差の感覚がつながっていく必要があります。
今回のような教材では、最初に「どちらが多いですか。どちらが少ないですか。おなじですか。」とたずねるやさしい問題があり、そのあとに「どちらが多いですか。いくつ多いですか。」へ進み、さらに進むと「増えたり減ったりしたあとの数をくらべる」問題へ発展していきます。この流れは、年中や年長の発達に合いやすい組み立てです。
いきなり式に入るのではなく、絵を見て比べるところから始めるので、子どもにとっても理解の道筋が見えやすいです。数字だけを見て考える前に、実際の量を目で見てつかめることが、この時期には大きな助けになります。
数をくらべる力で育つのは、計算力だけではありません
数の大きさを実感しやすくなります
「6のほうが4より多い」とわかるとき、子どもは数の順番だけでなく、量の違いも感じています。これは、数字を記号として覚えるだけでは育ちにくい部分です。
絵の中の食べものや動物を見て比べる問題では、数字がまだ抽象的に感じられる子でも取り組みやすいです。数がただの記号ではなく、「これだけある」というまとまりとして入ってきやすいからです。
この感覚が育つと、あとで7と8、9と10のような近い数を比べるときにも、ただ順番を暗記しているだけではない理解につながります。数の大きさを感じながら学べる子は、学校に入ってからも算数の話を受け取りやすくなります。
「同じ」「多い」「少ない」が言葉として定着します
数をくらべる問題は、見たことを言葉にする練習でもあります。「左が多い」「右が少ない」「同じだね」といったやり取りを繰り返すことで、数量を表す言葉が自然に身についていきます。
幼児の学びでは、わかっていても言葉にできないことがよくあります。反対に、言葉がつかめると考え方が安定しやすくなります。数をくらべる問題は、その両方をつなぐ役目があります。
小学校受験でも、学校生活でも、先生の問いかけを聞いて、自分の考えを短く言う場面は少なくありません。「どちらが多いですか」に対して、落ち着いて「右のほうが多いです」と言えることは、小さく見えて大事な準備です。
「いくつ多いか」を考える力が、たし算とひき算の前ぶれになります
「どちらが多いか」がわかるようになると、その次に出てくるのが「いくつ多いか」です。ここで子どもは、ただ順番を比べるのではなく、差に目を向け始めます。
たとえば、左が5こ、右が7こなら、「右が多い」で終わるのではなく、「2こ多い」と言えるようになっていきます。この考え方は、あとでたし算やひき算を理解するときの下支えになります。
式を早く覚えることより前に、「差がある」「その差はいくつか」という感覚があると、計算が意味のあるものとして入ってきます。学校で3たす2、7ひく2を学んだときにも、ただ答えを覚えるのではなく、量の変化として受け止めやすくなります。
見る力と注意の向け方も育ちます
数をくらべる問題では、子どもは左右を見比べ、数え漏れがないか確かめ、似た絵にまぎれずに見ていく必要があります。これは、ぼんやり見ているだけでは進みにくい課題です。
年中や年長は、机に向かう時間が少しずつ安定してくる時期ですが、まだ気が散りやすい子も多いです。その中で、絵を見て、順に数え、比べる流れを経験することは、注意を1つの課題に向ける練習になります。
受験準備という言葉を使わなくても、この力は生活の中で役立ちます。配るお皿の数が足りるかを見るときや、兄弟でおやつの数が同じかを確かめるときにも、見て比べる力が働いています。
増えた、減ったの理解へ自然につながります
教材が進むと、「左は2つ増えます」「右は3つ減ります」といった形で、変化したあとの数を比べる問題が入ってきます。これは、年長期にとてもよい練習です。
なぜなら、子どもはここで「今ある数」だけでなく、「これからどう変わるか」まで考えるようになるからです。数を固定されたものとして見るのではなく、動くものとしてとらえる力が育ちます。
この感覚は、文章題の入口にもつながります。小学校に入ると、足したり引いたりする場面を言葉で理解する必要が出てきます。その前に、絵と数の変化を結びつけておくことは、とても意味があります。
受験を考える家庭にとって、なぜ特に役立ちやすいのでしょうか
小学校受験では、数そのものを問う課題だけでなく、先生の指示を聞いて、見て、考えて、答える力が見られることがあります。数をくらべる問題は、その流れがコンパクトに入っている学びです。
まず、問題文を聞いたり読んだりして意味をつかみます。次に、左右の絵を丁寧に見ます。それから数えます。そして、比べた結果を言葉や数字で表します。1つの課題の中に、受け止める力、考える力、表す力がまとまって入っています。
しかも、内容が身近です。果物や食べもの、動物などを使って比べる形なら、幼い子でも意味がわかりやすく、家庭でも取り入れやすいです。難しすぎる知識を先取りするのではなく、年齢相応の形で基礎を厚くできる点がよいところです。
中学校受験まで見すえる家庭にとっても、ここは軽く見ないほうがよい部分です。あとで難しい問題に進んだとき、土台がしっかりしている子は、数をただ記号として追うのではなく、意味で考えやすいからです。早い時期の比較の経験は、遠回りに見えて、実はぶれにくい下地になります。
よくある誤解を1つだけ先に言うと、早く答えられることが最優先ではありません
数の問題というと、つい「すぐ答えられる子のほうができる」と見えやすいです。けれども、年中や年長の段階では、早さだけで判断しないほうが安心です。
本当に見たいのは、適当に言って当たることではなく、見て、数えて、確かめる流れが身についているかどうかです。少し時間がかかっても、指でさしながら丁寧に数えられる子は、ここから伸びやすいです。
逆に、たまたま答えが合っても、毎回数え方がぶれていると、あとで「いくつ多い」「増えたらいくつ」の場面で苦しくなりやすいです。今の時期は、速さより、確かさのほうを大事に見ると家庭での声かけも安定します。
家庭で取り組むときは、少しだけ見方をそろえると続けやすくなります
まずは「見てわかる差」から始めると入りやすいです
最初から数が近い問題ばかりだと、子どもによっては疲れやすくなります。たとえば3こと7このように差がはっきりしているものから始めると、「多い」「少ない」がつかみやすいです。
この段階では、正確に言えたことを受け止めるだけでも十分です。自信がつくと、次に差が小さい問題へ進みやすくなります。
数える順番を整えるだけで、理解しやすくなることがあります
途中で同じものを2回数えてしまう子や、1つ飛ばしてしまう子は少なくありません。そのときは、「上から見てみようか」「左から順にいこうか」と、数える道筋を整える声かけが役立ちます。
答えを急がせるより、見方をそろえるほうが、結果として正確さにつながりやすいです。数をくらべる力は、頭のよさを試すものではなく、見方を育てるものでもあります。
「どうしてそう思ったの」と聞きすぎなくても大丈夫です
考える力を育てたいと思うと、毎回説明させたくなることがあります。ただ、年中や年長では、わかっていても言葉が追いつかないことがあります。
「右のほうが多いね」「じゃあ、いくつ多いかな」と、短いやり取りで十分な場面も多いです。言えないことを責めず、少しずつ言葉を添えていくほうが、学びが止まりにくくなります。
生活の中でも十分に練習できます
机の上の問題だけが学びではありません。おやつを2人分に分けるときに「どっちが多いかな」と聞いたり、積み木を並べて「同じ数にしようか」と話したりするだけでも、数をくらべる力は使われます。
特に祖父母との時間では、急がずに会話しながらできるのがよいところです。散歩のときに「今日は鳥がこっちに多いね」と言うだけでも、比べる言葉に親しむきっかけになります。
こんな様子が見えたら、数の土台が育ち始めています
数をくらべる学びが進んでくると、子どもは少しずつ変わってきます。たとえば、数え終わったあとに自分から「こっちが多い」と言えるようになります。前は全部数え終わっても迷っていた子が、比べるところまで自然に進めるようになります。
また、「同じだね」と言えるようになるのも大事な変化です。多い少ないだけでなく、等しいという見方が入ってくると、数を関係でとらえ始めています。
さらに、「1こ足りない」「2こ多い」と差に目が向くようになってきたら、次の学びへの準備が進んでいます。年齢や性格でペースは違いますが、この方向に動いていれば、焦る必要はあまりありません。
反対に、うまく進まないときは、数の前に見る負担を減らすとよいことがあります
数が苦手に見えても、実は数そのものではなく、絵の見づらさや、並びの複雑さで止まっていることがあります。物が散らばっていると数えにくい子もいますし、似た絵が多いと混乱しやすい子もいます。
その場合は、数を減らした問題に戻したり、並びが整ったものを使ったりすると、急にやりやすくなることがあります。できないのではなく、今は負担が少し大きいだけ、ということも多いです。
年中や年長は、伸び方に幅がある時期です。昨日はできたのに今日は迷う、ということも珍しくありません。できたり戻ったりを繰り返しながら定着していく時期だと考えると、家庭でも受け止めやすくなります。
この教材のような問題が年中や年長によい理由を、最後にまとめると
数をくらべる問題がよいのは、数え方の練習で終わらず、数の意味、ことば、差の理解、注意の向け方まで一緒に育てやすいからです。しかも、絵を見て考える形なので、幼児にとって入り口がやさしいです。
やさしい段階では「多い・少ない・同じ」を見分けます。少し進むと「いくつ多いか」を考えます。さらに進むと、増えたり減ったりしたあとの数まで追えるようになります。この段階の積み重ねが、年中や年長の学びとしてとても自然です。
受験を考えている家庭にとっては、基礎を急がず整える練習になります。まだ受験を決めていない家庭にとっても、学校での算数や日常のやり取りにつながる、無理のない学びになります。
大事なのは、たくさん解くことより、子どもが「数がわかると見え方が変わる」と感じられることです。その感覚が少しずつ育っていけば、今の取り組みは十分に意味があります。家庭のペースに合う形で続けられるなら、年中や年長の今こそ、始める価値のある学びと言えそうです。
参考文献
幼児期の算数は、その後の学びに向かうための “vital foundation for future mathematics learning” と位置づけられています。
Greg J. Duncan et al., School Readiness and Later Achievement
就学前の学びの中でも、早期の数の力は “the greatest predictive power” を持つと整理されています。
Virginia Kindergarten Readiness Program, Number Comparison and Ordering
比べる学びでは “more, fewer, same” を理解し、数や集まりの比較が、たし算やひき算の土台になると説明されています。
Early Math Initiative, Counting Objects
数える学びでは “the last number word counted” が、その集まり全体の数を表すという理解が大切だとまとめられています。
Early Math Initiative, Arithmetic
幼児期には、数えること、比べること、増減を考えることがつながって育ちやすいとされています。
Cueli et al., Attention, inhibitory control and early mathematical skills in preschool children
注意、ワーキングメモリ、気持ちや行動を抑える力が、幼児の算数の学びと関係しやすいことが示されています。
